もともとは、1867年にドイツの産婦人科医であるクリステレルが初めて提唱したとされていて、妊産婦のお腹に両手を置いてマッサージする、および陣痛に合わせて圧迫して胎児を押し出す、という手技を意味していたようです。
ところが、日本では、陣痛促進剤を使用したり、吸引分娩や鉗子分娩などをしたりして、分娩を急ぐときに用いられ、馬乗りになって体重をかけて強く圧迫することなどもあり、提唱された方法とは異なる行為も全て、「クリステレル胎児圧出法」だとされていました。
これからは「クリステレル」という用語は使わない
このようにお腹を押す「クリステレル胎児圧出法」は、合併症として、子宮破裂、胎盤剥離、頸管・会陰裂傷、母体内臓損傷等の有害事象が報告されていますが、特に、圧迫により胎盤の循環が悪化して、胎児の状態が悪くなることがあります。
そのために、「数回で娩出できると判断される場合に用いること」や、「1~2回試みても娩出されない場合は、巨大児、産道の狭窄、児頭骨盤不均衡などを考え、帝王切開術など分娩方法を切り替える必要もある。よって、単に分娩を急ぎたいという理由で漫然と実施すべきではない」と指導されてきましたが、今回の「第4回再発防止に関する報告書」によると、クリステレル胎児圧出法がなされて重度の脳性麻痺になった56例の内、5回以上も圧迫をしていたのが6例あった上、何回圧迫したかが記載されておらずわからないという杜撰な事例が20例もありました。
このような状況の中、日本産婦人科医会が行った最新のアンケート調査によると、「クリステレル胎児圧出法」は全医療機関の90%で行われ、全ての経膣分娩の11.2%で行われているとのことです。また、日本産婦人科学会等が監修している「産婦人科診療ガイドライン」では、今年の4月以降、意味が分かりにくく、その技術も標準化されていなかった「クリステレル胎児圧出法」という用語は、今後は使わず、「子宮底圧迫法」という言葉で統一する、としています。
「子宮底圧迫法(クリステレル胎児圧出法)」や「吸引分娩」を、医師らが4回も5回も試みようとしている場合、妊婦の家族は、「すぐに帝王切開に切り替えてほしい」と訴えるべきなのです。