2024年4月26日(金)

患者もつくる 医療の未来

2014年5月28日

子宮破裂してもすぐに帝王切開に切り替える
「ダブルセットアップ」は本当に可能か

 「クリステレル」と同じように、今回の「第4回再発防止に関する報告書」で、今後、使うべきでないとされた用語があります。それは、「ダブルセットアップ」です。

 入院後に子宮破裂して重度の脳性麻痺になった事例のうち、5例が、過去に帝王切開術の既往がある妊婦が経膣分娩を目指して起こった事故でした。過去に帝王切開術の既往があった場合、経膣分娩を試みると子宮破裂に至るリスクが非常に高くなります。にもかかわらず、それを目指す際の説明で医師がよく使う言葉が「ダブルセットアップをするから」というものです。

 これは、「子宮破裂したときのために、すぐに帝王切開ができる準備も同時に行いながら経膣分娩を試みる」という意味です。そう言われると、「もし子宮破裂しても母子の安全は確保される」という意味合いだと妊婦や家族は考えてしまいます。

 しかし、今回の「再発防止の関する」報告書では以下の記述が掲載されました。

 『ダブルセットアップ(Double set up)とは、特に緊急帝王切開術決定時に既に準備ができている状態であり、何か異常があった場合や緊急帝王切開術が必要となった場合には即手術へ切り替わる体制のことである。米国の最高レベルでの分娩施設のダブルセットアップは、分娩室で分娩中に子宮破裂、臍帯脱出等が出現し、帝王切開術と決定した場合、分娩台が手術台となり、いままで分娩に立ち合っていた医師ではない別の医師がすでに手洗いをして、すぐに執刀できる体制になっている状態で、かつ麻酔科医や新生児専門の医師も待機している状態をいう。しかし、現在の日本の状況を考えると、このようなダブルセットアップの体制を整えることができる分娩施設はごく少ないといってよいとされている』

 『現在のわが国の産科臨床においては、母児の状態をモニターできる機器が整っており、いつでも輸血できるように血液が用意できていて、手術器具も消毒され、手術室も確保されている状態をダブルセットアップと考えられている場合が多い。……』

帝王切開の既往があれば、
次のお産も帝王切開を

 これは、日本では本当の意味でのダブルセットアップは実質不可能であるのに、妊婦や家族に、誤った期待を抱かせていたということを意味しています。


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