2024年11月22日(金)

患者もつくる 医療の未来

2014年5月28日

 本来は、子宮破裂をしたら分娩台がそのまま手術室になり数分で帝王切開術を行うようなイメージです。その場合、母子ともにリスクはかなり小さくなるでしょう。しかし、日本では現実には、分娩室で手術をしてくれるところはほとんどありません。いざということきは、そこから手術室へ移動して手術を行うのであり、通常の緊急帝王切開とあまり変わりません。ただ、いざというときのために手術室を空けておいてもらうということを日本では「ダブルセットアップ」と呼んでしまっていたのです。この場合、子宮破裂してから胎児が取り出されるまでには早くても20~30分はかかってしまうのが実情であり、それでは、脳性麻痺になるのを防ぐことは極めて困難なのです。

 したがって、日本の現状では、帝王切開術の既往がある人は、その次のお産も帝王切開術をすべきなのです。もちろん、帝王切開術も大きな手術ですから様々なリスクを伴いますが、経膣分娩を試みる方が遙かにリスクが高いのです。

 帝王切開術の既往があっても経膣分娩を試みる場合に、「もし、子宮破裂した場合は、すぐに帝王切開術ができるようにダブルセットアップで対応します」と医師が言ったとしても、それは、母子ともに助ける本来のダブルセットアップの意味ではなく、「子どもの脳性麻痺を避けることは難しいが、母親が死んでしまうようなことはないようにする」という程度の意味だと理解しなければいけないのです。ところが、そういう詳しい説明がされていないのが日本の現状なので、誤解を招く「ダブルセットアップ」という言葉は使うべきではない、ということが、今回示されたわけです。

 産科医療補償制度のホームページのトップの「資料集」の中の「再発防止に関する報告書・提言」をクリックすると、第1回から第4回までの「再発防止に関する報告書」の全文を読むことができまず。

 妊婦さんとその家族は、ぜひ、目を通しておいてほしいと思います。

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