2025年12月6日(土)

「最後の暗黒大陸」物流の〝今〟

2025年9月19日

 しかし、標準貨物自動車運送約款等の改正が施行され、トラックドライバーの労働時間が注目されるようになった翌年の18年以降のトレンドに目を向けると、異なる傾向が見えてくる。

 図7は、18年1月から25年6月までの道路貨物運送業就業者の月間労働時間の推移を示したものである。横ばい傾向となっている。本来であれば労働時間が減少傾向に転換すべきこの間に、横ばい傾向への揺り戻しが発生したのである。

 しかし、読者の中には、図6が示している通り、トラックドライバー数の漸増傾向、トラック輸送貨物量の漸減傾向が続く限り、「運べないリスク」が顕在化しないのではないかと考えも一定の割合でいるかも知れない。しかし、そうは問屋が卸さないというのが、筆者の考えである。

必ず噴火に至る「物流2024年問題」のマグマ

 「物流2024年問題」の顕在化が先延ばしになっただけで、決して終息したわけではなく、いずれかの時点で顕在化する可能性が高い。そのことは図8で理解できる。

 この図は、輸送・機械運転従事者の年代別構成比を13年から24年までの推移で示したものである。50歳以上が年々増加しているのに対して、49歳以下は年々減少している。特に、65歳以上の構成比は、この10年余りの間に7ポイント以上増加しており、高齢化が著しく進行している。トラックドライバーの漸増傾向がそう遠くない将来に減少傾向に転ずることは、誰の目にも明白であろう。

 表3は、NX総合研究所の「企業物流短期動向調査」の“物流の2024年問題に関する追加調査”の結果の一部である。「物流2024年問題」に向けて既に取組んでいる事業所は半分前後に過ぎない。しかも、その取組みの多くは、本質的な根本治療とはほど遠い対処療法的取組みなのである。

 このような状況は、今のところ「運べなくなるリスク」のマグマは噴火には至ってはいないが、地表近くまで押し寄せてきていて、噴火は時間の問題と考えるのは筆者だけでろうか。

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