科学的な根拠に基づいたアウトプットコントロールで管理されている魚は、持続的な資源管理が可能になっていくのです。インプットコントロールだけでは限界があります。それ故に、日本の中でも同じ魚種で資源量の優劣が発生したりしてしまいます。ノルウェーの場合は、県や漁場ごとに資源を管理しているわけではありません。多くの魚は回遊します。A県では資源管理をしているが、魚が泳いでB県やC県に入ると乱獲で獲られてしまい「正直者が馬鹿を見る」でよいわけはありません。ノルウェーを始めとする北大西洋の海では、県ではなく、国をまたいで魚が回遊してします。国益が絡むのでアイスランドと英国で起こった有名な「タラ戦争」等これまで国際問題にも発展してきました。
日本の場合は、特に太平洋のマサバ等日本の排他的経済水域(EEZ)内を泳ぐ魚は、自国で管理できるので、世界の資源管理の「常識」を理解し、実践すれば状況を変えることはできるのです。ただし、資源をあまりにも痛めつけてしまった場合は、手遅れとなりその回復に何10年かかるかわかりません。一刻も早い処置が要求されます。
筆者は考えます。北海道のニシン、秋田のハタハタ、三陸のキチジ、ウナギ、クロマグロ等、これまで乱獲により資源を大きく減少させてしまいました。日本の水産資源で低位に分類されるものは実に4割にも上ります。現在、水産行政に関わる方々が担当される随分前に起きたことがほとんどです。しかし、これからは世界に処方箋がある以上、それを取り入れず、水産業で発展するどころか逆に、漁業者を苦しめ、地方の衰退をさらに進めてしまう行政は、現在の関係者の責任となるのではないでしょうか?
世界を混乱させるいい加減な日本のTAC
これまでも日本のTAC自体が世界の常識からずれている問題点を指摘しましたが、サバとサンマを例にとって、そのずれと世界の関係者に与える影響をご説明しましょう。
5月末、水産政策審議会が開催され、今期のTACに関しての審議がありました。サバのTACは昨年度の70万トンから90万トンに、サンマは34万トンから36万トンになりました。2013年のサバ類の漁獲は、大西洋系(ノルウェー・EU主体)で約90万トン、太平洋系で160万トン(うち日本40万トン)の合計で250万トンと推定されています。世界中の実務者が集まる国際会議(Pelagic Fish Forum)で世界の主要青物(サバ、サンマ等)の供給見込みを話し合うのですが、ここで日本のTACのいい加減さが毎年露呈します。
各国の予想水揚げ数量はTACがベースになります。当然、実際の水揚げはその前後10%程度に収まります(例 アラスカのスケトウダラは1977年~、平均で2%の誤差。2ページの表参照→公開後にリンクします)。実際の資源が大幅に増えている大西洋系のサバは2013年の90万トンから140万トンに増加し、供給が増えます。大西洋系のサバも当然TAC=漁獲量です。実際の水揚げ数量の推定は容易になります。しかし、ここに日本の数量を加えると筋が通らなくなります。