関係者は当然TACをベースに数量を推定します。日本のTAC 90万トンをそのまま加えると、太平洋系のサバの供給量の推定は、何と160万トンから210万トンに一気に増えます。90万トンという数字自体、2013年の大西洋系全部の水揚げ(ノルウェー、EU各国他の合計)で90万トン(うちノルウェー15万トン)ですので、一国の数字としてはもの凄い数字となり、これが事実であれば世界のサバ需給に大きな影響を与える大ニュースになります。
しかし、実際には2013年の日本のサバはTAC 70万トンに対してその半分程度しか獲れておらず、また他の年度においてもTACと実際の漁獲量に大きな乖離があります。筆者は供給面の説明を依頼されているので、日本のTACはTAC=漁獲量ではないことを、毎年説明しています。2013年までの過去10年間の平均は(1~12月ベース)で約50万トンです。このような国際的な場で日本のいい加減な管理状況をさらすのは恥ずかしく、かつ各国の関係者に大きな誤解を与えるため、一刻も早く科学的根拠に基づく世界の基準に合わせるべきです。
北部太平洋では、東日本大震災の影響で漁獲圧力が減り、漁獲を逃れた魚が産卵して資源が回復しているものと思われます。そのまだ食用に向かない小型のサバを獲って「大漁!大漁!」と漁獲数量を増やしたら、それこそ貴重な資源は台無しです。日本では漁獲サイズの規制はありませんが、ノルウェーでは個別割当制度を導入しているので、漁船は小型魚の漁獲を避けようとします。
サンマ関係者の悲痛な声
サンマについても同様です。2013年のサンマの供給量は世界全体で38万トン、うち日本の漁獲は15万トンでしたが、TACは34万トンと大きく乖離しています。サンマの2014年のTACは36万トンと、2013年の漁獲15万トンの倍以上です。いったい全体、サバもサンマもそんなに獲れるのか? また、そんなに獲っても本当に資源は大丈夫なのでしょうか?
サンマのTACについて道東小型サンマ漁業協議会は「一区(日本沿岸から東緯162度)の資源が減っており、沿岸は極端な不漁。これで資源が中位と言えるのか? 」、関係者からも「一区の漁獲量がとてつもなく低いにもかかわらず、中位・横ばいという評価を安易に出すと、台湾や中国が増やして大変なことになる」という意見も出ています。2013年は台湾船の漁獲が18万トンと、日本の15万トンを初めて上回っています。サンマのTACについても、全体の供給像がおかしくならないように、サバ同様漁獲予想は日本が設定したTACから減らして報告しています。しかし一度決めたTACを平気で変更する(資源が豊富と見れば数字を大きくする)日本では、実際の漁獲数量は、毎年その年にならないと全く分かりません。