2025年12月6日(土)

偉人の愛した一室

2025年9月28日

大切に保管された資料が
物語る商人道

 屋敷内には3棟の蔵が遺されている。うち1棟にはお膳用の食器類の他、大量の寝具が納められていた。正月に店員の家族を招いて祝うためのもので、店員を大事にした初代忠兵衛の姿勢をいまに伝える。別の蔵には創業からの歴史が展示され、中の一枚、東大寺大仏殿で大勢を撮影した記念写真は、店員たちの慰安旅行の折のものだ。蔵の中に眠っているのは、店員を家族のごとく大事にした伊藤忠兵衛の商人道だった。

店員らとの食事会や、その家族を招いた際に使用した布団と食器類。その数に忠兵衛の気概が感じられる
来客や店員をもてなした食器類。その数の多さに思わず圧倒される
展示室内に飾られた慰安旅行の写真。当時から慰安旅行を実施していたことにも驚きだが、その記録が丁寧に残されているところに店員を大切にしていた様子がうかがえる

 2020年、伊藤忠は「三方よし」を企業理念とする決定を下したという。時価総額日本一の商社が近江商人を持ち出すことに驚くが、思えば、持ち下りした他国で受け入れられるための〝三方よし〟ほど、世界を股にかけるビジネスに相応しい言葉はないかもしれない。

Facebookでフォロー Xでフォロー メルマガに登録
▲「Wedge ONLINE」の新着記事などをお届けしています。

新着記事

»もっと見る