プーチン氏は、米国によるトマホークの供給は、トランプ政権下で改善し始めたロシアとの関係を損なうだろうとして、「それは完全に新たなエスカレーションの段階を意味するだろう」と述べている。
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トランプは舵を切ったのか
ここ数カ月ほどの間、トランプ大統領のプーチンやロシアに対する発言には厳しいものが目立つようになったが、9月下旬以降、この傾向がより明確になりつつあり、トマホーク・ミサイルの供与といった具体的な対ウクライナ軍事支援の可能性さえ報じられるようになった。
果たしてトランプは実際、ロシアに対し真に厳しく対応する方向に舵を切ったのか。また、新たなインテリジェンス情報や長距離兵器の対ウクライナ支援は本当にあり得るのか。
まず、トランプの対ウクライナ支援に関する姿勢は真に変化したと言えるかについて。9月23日にトランプ大統領が自身のSNSに投稿したメッセージは、①ウクライナは欧州の支援を得て全領土を奪還できる、②ロシアは深刻な経済問題を抱えている、③米国はNATOに武器を供給し続ける等とするもので、確かにそれまでとは大きく異なる内容を含んでいた。トランプの心境に何らかの変化があった可能性はある。
しかしながら、トランプのメッセージに、米国自身が直接何らかの軍事的貢献をなすことを示す表現はない。トランプにとってウクライナ戦争は「バイデンの戦争」であり「欧州の戦争」であるとする基本的スタンス自体の変化を、これまでのメッセージから導くのは難しい。ただし今後とも今の傾向が続けば、いずれかの時点で厳しいメッセージと現実の行動との緊張関係が維持できなくなる可能性はあるだろう。
次に、米国が実際に新たな軍事的措置をとる可能性について。米国がとるかもしれない新たな措置として、9月末頃から複数のメディアで示唆されているのは、①新たなインテリジェンス情報の提供と、②トマホークなどの長距離兵器供与の可能性である。まず前者について言えば、トランプの意向次第という面はあるものの、十分にあり得ると言って良いだろう。
そもそも標的の位置情報や敵ミサイルの軌道や着弾点等に関するインテリジェンス情報については、それなしには既に保持している高機動ロケット砲システムHIMARS(ハイマース)や長距離地対地ミサイルATACMSも運用不可能なので、今でも現に提供されているはずだ。
ではそれ以上の「新たな」インテリジェンス情報とは何か。ウクライナにとってありがたいのは、ロシアの防空システムに関する情報、戦闘部隊の現在地点、その規模と移動、武器弾薬の種類と貯蔵地点などの戦略情報であろう。
