93年、非自民連立政権の誕生で下野後、試行錯誤を重ねた末に99年、自民党は公明党との連立政権樹立に踏み切り、55年体制になぞらえて、「99年体制」と筆者が位置付ける自公政党連合優位体制で現在に至る。
社会主義、共産主義勢力へ対抗するという大きな目的のために、近代的自由主義者から復古的右派勢力まで、ハト派からタカ派に至るまで包含することで誕生した自民党。その成り立ちからも明らかなように、自民党の特徴である〝融通無碍〟さを発揮し、巨大宗教団体を支持母体とする公明党と緊密な選挙協力を行う政党連合を形成、政権を維持している。
しかし、2009年の衆院選大敗による二度目の下野を経験するなど、55年体制に比べれば脆弱な体制である。
支持されない場当たり政策
上がらない絶対得票率
自公が選挙協力して臨んだ00年以降、現在まで9回行われている衆院選で、自民党が主戦場と位置付ける小選挙区選での、全有権者に対して自民党候補が獲得した絶対得票率を概観する。
00年(24・84%)、03年(25・52%)、05年(31・58%)と公明党の支援を受けて順調に絶対得票率を上げ続けたが、民主党に敗れ、下野した09年は26・26%と下落した。
12年の衆院選で、自民党は勝利、政権復帰し、21年の衆院選までは過半数を、24年の衆院選でも比較第一党となり政権を維持したが、この間、絶対得票率は24〜26%余りで09年のレベルにすら戻っていない。つまり、当時の安倍晋三首相の1強といわれた時代を含め、自民党は下野した時の絶対得票率を超えられていない。
特に24年衆院選は20.09%だった。自民党は全有権者の4人に1人の票は獲得していた「4分の1」政党から「5分の1」政党に転落しているのである。この間、自民党の経済政策は豊かさを目指す「成長の果実の分配」から糊口をしのぐ「現金の給付」に移り変わっていた。今の自民党体制での社会構造の激変への対応は限界を迎えている。
経済の長期停滞期に自民党が対応しきれず、支持を失っている。つまり、豊かさを伴った自民党型民主主義が、行き詰まったのだ。その究極が今年7月の参院選だった。
総括報告書を読むと、中間層の縮小と低所得層の増大という社会構造の変化に対応しきれていないことが参院選での敗因であることに自民党が気づいてはいることがうかがえるが、踏み込んだ分析はしていない。
具体的な分析がある。早稲田大学の橋本健二教授は近著『新しい階級社会』(講談社現代新書)で、現在の日本には890万人規模の最下層階級「アンダークラス」が形成されているとする。パートの主婦を除いた非正規雇用の労働者で、22年に橋本氏が東京・名古屋・大阪の3大都市圏で実施したネット調査によると、その平均年収は216万円で、貧困率37.2%にも上るという。
アンダークラスは政治に対する関心も高くないとされるが、多くの国民は日本が低所得化、極端にいえば「貧困化」を伴う「新しい階級社会」に移行したことを痛感しているのだろう。
