2026年1月31日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2025年10月24日

 ガザ・欧州に派兵も出費もしない。中東でも欧州でも、大統領は何でもできる。ガザとウクライナでのこの動きは、大統領の他の行動と同様、非伝統的で見事だ。外交がバレエなら、トランプはニジンスキーだが、どんな踊り手も重力には逆らえない。

 偉大な政治家たりたいとの野望から、トランプは伝統的政治家より外交で大きな影響を与えている。しかし、野望の実現には見出し作り以上が必要だ。彼は変わりつつある世界で米国が直面する大きな挑戦に対応する必要がある。

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「つぼ」は外し続ける

 一読して、遂にミードもトランプの軍門に下ったかと思ったが、何度か読むにつれ、ミードが忍ばせた毒に気づくようになった。その毒とは、トランプのことを、無節操に政策を変えるのにもかかわらず尻尾をつかまれない魔術師と呼ぶか、バレエのニジンスキーと呼ぶか、またはガザの関係で彼がやったことを「力と柔軟性」と呼ぶかに関わらず、正に、そこにおいて彼が犠牲にしているのは「一貫性と信頼性」であるということだ。

 もちろん人間だから、間違いはある訳で、間違った場合にはそれに拘泥することなく、誤りは早く正すに越したことはない。ただ、それは、間違ったかどうか、それを正す場合と続ける場合の損得等、一定の原理原則と慎重な検討により行うべきである。トランプが、ガザにおいて、それ以上にウクライナにおいて、そのような原理原則を持っているようにはとても思われない。

 それ以上に問題なのは、彼の「言葉の信頼性」が地に落ちていることである。トランプは、立場をどんどんと変える予測不可能性を力の一つの源泉としているようだが、そうだとすると、同盟国は「全ての手段を使って同盟相手を防衛する」という米国大統領の言葉をどこまで信じられるのか。

 信頼喪失のマイナス面は、見出しを取って目立ち、良い気持ちになることのプラスを大きく上回って余りあると言わざるを得ない。正に、ミードがニジンスキーへの言及に際して言っているように、「どのような踊り手も重力には逆らえない」のである。


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