2025年12月6日(土)

World Energy Watch

2025年10月22日

 まず、槍玉にあげたのは、ロシアからの化石燃料購入量1位と2位の中国とインドだ。ロシア産石油の購入を止めなければ、100%の2次関税を課すと脅し、インドには8月から50%の関税を課した。

 さらに、トランプ大統領は、北大西洋条約機構(NATO)加盟国がロシア産石油の購入を止めるべきと主張し、NATO加盟国の購入量3位のトルコにも圧力をかけている。

 日本にも圧力がかかってきた。ベッセント財務長官は、「訪米中の加藤勝信財務相に対しロシア産エネルギーの購入中止を期待していると10月15日に伝えた」とXに投稿した。

 米国の働きかけはあるものの、ロシアへの資金提供が続き、ロシアがテーブルにつかない状況に業を煮やしたウクライナは、8月からドローンによりロシアの製油所、パイプライン、輸出港などのエネルギーインフラ施設への大規模攻撃を始めた。ロシアの石油輸出に打撃を与え資金源を断つ狙いだ。

 ロシア国内ではガソリンスタンドが閉鎖される影響が出ているが、ロシアの資金調達に影響はでているのだろうか。

ロシアへの資金提供を続けるEU

 脱炭素のため再生可能エネルギーと原子力の導入を熱心に進めるEUだが、そのエネルギー供給の約7割は依然として二酸化炭素を排出する化石燃料だ(図-1)。EUはロシアのウクライナ侵攻まで化石燃料の供給をロシアに大きく依存していた。

 ロシアのウクライナ侵攻前の21年、EUの化石燃料の消費に占める輸入比率(数量ベース)は、石油、天然ガス、石炭それぞれで、91%、80%、57%だった。ロシアが石油、天然ガス、石炭の輸入に占める比率は、それぞれ27%、45%、50%だったので、EUは総エネルギー供給の約2割をロシアに依存していた計算になる。

 22年2月の侵攻直後から、先進主要7カ国(G7)とEUはロシアに対する制裁を実行し、EUは22年8月にロシア産石炭、22年12月に原油、23年2月に石油製品の輸入禁止措置を実行した。

 EUがロシアから購入していたパイプライン経由の天然ガスについては、米国、カタール産の液化天然ガス(LNG)で一部代替したものの、ロシアの供給量全てには到底足りず、ロシアからLNG主体に数量を絞りながらの輸入が継続されている。結果、ロシアからの化石燃料購入額は減少しているものの、依然としてEUのロシアへの支払いは続いている。

 侵攻が起きた22年2月のEUからロシアへの化石燃料購入の支出額は1カ月で162億ユーロ(2.8兆円)だった。その後支払額は減少しているが、それでも25年2月の輸入額は17億ユーロ(0.3兆円)ある。年間では3兆円を超えるペースだ(図-2)。


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