2025年12月6日(土)

World Energy Watch

2025年10月22日

 侵攻後パイプライン経由の天然ガス輸入量は大きく減少したが、ロシア産LNGの輸入量はロシアの侵攻前よりも増えている(図-3)。

 依然としてEUの資金もロシアの軍費を支えていることになるが、EUが買わなくなった石油、石炭を大量に買っているのは制裁に加わっていない新興国だ。

ロシア軍を支える化石燃料輸出

 EUが購入しなくなった化石燃料の大量購入を始めたのは、ロシアに対し制裁を課していない中国やグローバルサウスの国だ。

 23年1月1日から今年10月まで化石燃料購入代金としてロシアに支払った額は、中国2130億ユーロ(37.2兆円)、インド1300億ユーロ(22.7兆円)。3位EUの支払い額を大きく超える。

 4位ブラジル3.3兆円、韓国2.2兆円、シンガポール2.2兆円、サウジアラビア2兆円、アラブ首長国連邦(UAE)1.7兆円、台湾1.5兆円と続く(図-4)。ロシアの侵攻以降、世界はロシアに9610億ドル(168兆円)を化石燃料代金として支払った。

 日本は台湾に次ぐ11位、支払い額は85億ユーロ(1.5兆円)だ。その大半はサハリンからのLNG購入代金だ。産油国のサウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)は、ロシア産のガソリン、軽油を購入し、自国の消費に当て、自国産の石油製品を欧州などに輸出しているとされる。

 インドのロシア産原油の輸入量は、侵攻前にはインドの輸入量の1%ほどだったが、24年の輸入シェアは36%に達した。インドは国内需要を大きく超える製油所の能力を持っており、輸入されたロシア産原油はガソリン、軽油などに精製され、欧州、米国など多くの国に輸出されている。

 インドのエネルギー相は、インドがロシア産原油を購入しなければ、世界の原油価格が供給不足により高騰すると購入を正当化しているが、インドの購入のインセンティブは、EUから締め出されたロシア産原油の大きな値引き販売にある。

 国際石油価格の標準とされるブレント原油に対し、ロシア・ウラル原油の値引きはEUの制裁開始直後には3割とも言われたが、いまは1割前後だ。

 トランプ大統領が50%の関税を課したインドの最大の輸出相手国は、輸出額の18%を占める米国だ。関税により米国向け輸出が大きな打撃を受け、モディ首相は期限を定めなかったがロシア産石油の輸入中止の表明に追い込まれた。

 EUはロシア産原油からインド、トルコで精製された石油製品の輸入禁止を決めたが、その効果はすぐにはでない。

 その状況下で、ウクライナは、ロシアの収入をさらに減らし交渉に引っ張り出すべく、8月からロシアの製油所へのドローン攻撃を急増させた。


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