ロシアの輸出は影響を受けているのか
英BBCは、ウクライナの長距離ドローンによりロシア内の38製油所の内21カ所が今年攻撃され、10製油所が全面あるいは一部操業停止に追い込まれたと報道した。 攻撃対象は、ロシアの部隊への供給に使われる国境に近い製油所と大規模製油所だ。
9月24日にウクライナ国境から1100キロメートル以上離れたガスプロムの製油所が攻撃された。翌日ロシア政府はガソリンの輸出禁止を年末まで延長し軽油などの輸出を一部禁止すると発表した。
ウクライナ・プラウダによると、9月28日時点でロシアの精製能力の38%が停止しており、その7割はウクライナのドローン攻撃が原因としている。
ロシア国内では、ガソリンの不足が顕著になり、価格上昇と多くのガソリンスタンドでの行列が伝えられているが、ウクライナが狙いとしたロシアの収入減も小さいながら実現しているようだ。
欧州のシンクタンクCREA(Center for Research and Clean Air)はロシアの化石燃料収入の分析を続けている。CREAによると、9月のロシアの化石燃料輸出収入は前月比4%減の1日当たり5億4600万ユーロ(約950億円)となり(図-5)、ウクライナ侵攻以降最低になった。
輸出数量の推移は、図-6の通りであり、石油製品の輸出が減少した分国内で精製できなかった原油の輸出が増えているが、石油製品と原油には価格差があり、ロシアの収入減につながったとみられる。
トランプ大統領のロシア産エネルギーの輸出削減への輸入国への圧力とウクライナのドローン攻撃は、これから大きな効果をあげるのだろうか。ロシアも冬を前にウクライナのエネルギーインフラ施設への攻撃を激化させている。EUも対ロシア制裁の強化に乗り出している。
欧州委員会は、今年7月にロシアからの天然ガス輸入を27年末までに停止する案を発表していたが(トランプの「ロシア制裁」2次関税はインド経済を直撃か?高まるロシア資源への締め付け、テスラにも影響か)、10月20日に欧州理事会が合意したので、今後の欧州議会の同意により2年余りでロシア産天然ガスの輸入は禁止される(ただし、ハンガリー、スロバキアなどの内陸国は除外される)。
一方トランプ大統領はプーチン大統領との電話会談後、巡航ミサイル・トマホークの貸与に慎重な姿勢を見せ始めた。プーチン大統領はドネツク州の割譲を条件とした停戦を提案したと報じられている。長距離ドローンの攻撃とトランプ大統領の輸入国への圧力は、プーチン大統領に停戦を考えさせる効果があったのだろうか。
国際刑事裁判所(ICC)から逮捕状が出ているプーチン大統領は、今年4月3日にICCに脱退を通告している(発効は26年6月2日)親ロシア国ハンガリーで、2週間以内にトランプ大統領と会談するようだ。国民に犠牲を強いる戦争は止まるのだろうか。


