2025年12月7日(日)

Wedge REPORT

2025年10月24日

――NTTの副社長を退任された後もフォーラムを率いていらっしゃいますね。

「NTTでは新たにチーフエグゼクティブフェローというタイトルを拝命して、フォーラムの会長を務めています。IOWNはNTTの技術と思われがちなので、むしろ副社長を退任したことで中立的な立場で活動ができるようになりました。IOWNの実装は30年を目指していますので、要請があれば、引き続き任務を全うしたいと考えています」

1Finity社長 森林正彰氏

1Finity(ワンフィニティ)社長 森林正彰氏
NTTヨーロッパ社長やNTT Limited副社長などNTTの海外戦略を担った国際通で、NTT西日本社長を2024年3月に退任した後、富士通に入社。同社が今年7月に通信機器事業を分離独立させた子会社、1Finityの社長に就任した。今回のダラス会議では富士通の子会社としてフォーラムのホスト役を務めた。

――今年7月に富士通から独立した1Finityとはどんな会社ですか。

「モバイルや光技術、ソフトウェアなど富士通の通信機器事業をそっくり切り出した会社です。世界全体で約4800人の社員がおり、米国はカリフォルニアとフロリダ、ダラスに約1300人います。

 ダラスには米AT&Tなどの大手通信会社の拠点が集まっており、富士通としては40年前から工場などを置いてきました。ダラスには約700人が配置され、光技術に力を注いでいます」

富士通の子会社「1Finity」の展示

――IOWNは米国ではどのように受けとめられていますか。

「生成AIの登場により、データセンター間を結ぶための高速で消費電力の小さい光技術に大きな関心が集まっています。北米では米シエナやフィンランドのノキアなどが光技術で高いシェアを持っていますが、我々も約10%のシェアで3位くらいに位置しています。

 その意味ではIOWNはグローバルな通信市場で日本企業が再び競争力を取り戻す技術になりうると考えています。光通信市場は倍々ゲームで伸びており、我々も30年には売上高を1.5倍くらいにしたいと思います」

――富士通は今年9月に米通信ベンチャーのArrcus(アーカス)に出資しました。

「ArrcusはIPネットワークのルーターやスイッチをホワイトボックスにして販売しているカリフォルニア州のベンチャー企業で、10年以上かけてその汎用ネットワークOSとなるソフトウェアを開発してきました。ハイパースケーラーは独自に技術を開発していますが、今後は異なる通信機器メーカーの製品を相互接続する必要があり、彼らの技術力が生きると考え、提携関係を結ぶことにしました」

――IOWNは今後、どういった分野で活用が進むと考えますか。

「データセンター以外にも、放送番組のリモート制作といったメディア系やヘルスケア、金融などあらゆる分野に利用できるでしょう。光電融合技術が進み、半導体チップの中まで光接続できるようになれば、消費電力を格段に引き下げることができます。IOWNは我々にとって大きなチャンスだと考えています」


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