奪われたWBCの放映権
来春には、日本代表「侍ジャパン」が2連覇を狙う第7回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)開催が控え、大谷選手らメジャー組の出場が決まれば、こちらもメジャーの選手を中心とした報道になることが予想される。
一方で、WBCの日本からの視聴環境は大きく変わる。無料の地上波中継が消滅するからだ。
米動画配信大手「Netflix(ネットフリックス)」で、全47試合の独占放送権を獲得し、日本のファンは、月額890円からの有料会員にならなければ、視聴できなくなった。
スポーツニッポンの記事によれば、23年大会の放映権料も約30億円と、前々回の17年大会から3倍近くに跳ね上がっていたが、26年大会は150億円にまで高騰したとみられるという。共同通信の8月26日付記事によれば、前回大会を中継したテレビ朝日系とTBS系が交渉を進めたが、及ばなかったという。
そんな日本の状況とは裏腹に、米国内では、FOXスポーツが米国内放送権を獲得し、米国が入る1次リーグB組の3試合、準々決勝2試合、決勝を含む計7試合が、日本国内では視聴できない地上波で中継される予定となっている。ネットフリックスにとっては、日本の視聴ニーズがそれだけ高く、また、WBC視聴を通じて、野球ファンを有料会員に取り込めるチャンスと判断したということだろう。
もはや一方的な搾取の構造
日本は、メジャーにとって選手の供給に加え、市場としても「金儲け」のターゲットとなっていることは明らかだ。WBCを第1回から盛り上げてきたのは日本代表であり、日本国内でのメジャー人気を支えているのも、日本球界から巣立った日本選手たちだ。
かつては、日本球界からメジャーへ選手が流出しても、国内に新たなスター選手が生まれてくるという楽観的な見方も多かった。しかし、多くのトップ選手が20代で海を渡るようになり、流出のペースも加速する。
現在のプロ野球は地元ファンを大切にし、足元での観客動員数は伸びているが、「対メジャー」において、一方的な搾取に打つ手がない窮状は深刻だ。ドジャースの歓喜を、日本球界はただ眺めているわけにはいかない。
