2025年12月14日(日)

日本の漁業 こうすれば復活できる

2025年11月6日

「ニホンウナギは増えている」?

 ところがワシントン条約への掲載提案が出るや否や、水産庁はこれまでの発言を180度転換、「ウナギは増えていて、資源的に問題ない」と訴えるようになっている。筆者はこのほど水産庁が各国政府等に対し説明する際に用いている資料を入手したが、これには「1990年以降資源量は回復」として、同年以降資源量が上向きとなっているグラフが掲載され、絶滅の危機には瀕していない、としている。

 この主張の根拠となっているのは、スライドにもある(Tanaka, 2025)という論文である。この文章は14年に同じ著者によって執筆された文章(Tanaka, 2014)の改訂版であり、後者には資源評価に用いたデータソースが記載されている。

 そこでデータソースを見てみると「ウナギが増えている」という評価の基となっているのは、ウナギの成魚に関しては、農水省の「漁業・養殖業生産統計」と「漁業センサス」にある茨城県の霞ケ浦・北浦、および全国12湖(霞ケ浦・北浦を含む)の漁獲統計等であることがわかる。これらの湖沼におけるウナギの漁獲量を下図に示したが、漁獲量は右肩下がりで激減している。

※全国12湖(小川原湖・霞ケ浦・北浦・涸沼・印旛沼・手賀沼・三方湖・北潟湖・湖山池・東郷池・宍道湖・神西湖)
Tanaka 2014の補足資料(supplementary material)に採録されている農水省統計を用いて作図  写真を拡大

 ところが、水産庁が自説の根拠としている報告では、これらの湖での釣獲率(CPUE)を計算したところ、1990年以降増加している、と結論付けている。

 釣獲率(CPUE)は、正確には「単位努力量当たり漁獲量(Catch Per Unit Effort)」と呼ばれる。魚の資源量を示す指標として用いられ、漁獲量をその漁獲に要した努力(網をひいた回数、出漁日数等々)で割り算したものである。ウナギに対して適用するならば、「ウナギの漁獲量」を、「ウナギを漁獲するために要した漁獲努力量(ウナギを捕るために出漁した日数等)」で割る、ということになる。

 ところが「ウナギは増えている」という根拠となる報告(Tanaka 2014, Tanaka 2025)では、霞ケ浦と北浦の釣獲率の計算において、「ウナギの漁獲量」を「全ての漁法の出漁日数の合計」で割っている (海部健三「日本のウナギ資源管理」(東北大学東北アジア研究センター国際シンポジウム「東アジアにおけるウナギの保全と持続可能な利用」配布スライド資料)9頁目)。

 しかしこれらの湖の漁業者は、ウナギだけを捕っているわけではない。例えば以下の図は農水省「漁業・養殖業生産統計」による霞ケ浦と北浦の魚種別漁業生産量の推移と、これに占めるウナギの割合だが、ウナギの漁獲量は全体の0.4%に過ぎない。


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