2025年12月14日(日)

日本の漁業 こうすれば復活できる

2025年11月6日

 市場に流通するウナギ加工品の種の識別を試みた研究が遺伝子分析に頼っている(例えばGoymer et al. 2023Choo et al. 2025を参照)ことは、現在のところ形態上の違いから確実に種を判別できないことを示している。遺伝子分析を用いてスーパーで販売されているウナギを調べたところ、4割近くはニホンウナギではなくアメリカウナギであったことも近年の調査結果から明らかとなっているが、この研究がなければこうした事実も知られることはなかったであろう。

 ウナギの蒲焼きが、それがニホンウナギかアメリカウナギか、外見のみから判別することなど、ウナギの蒲焼きを日常的にスーパーで見かける我々日本人にとってもおよそ不可能である。

「ウナギ最大99.9%減」の衝撃

 ではウナギの資源量は実際どうなっているのか。これについては今年最新の研究結果が明らかとなっている(Kaifu et al. 2025)。この研究では、ウナギ放流による影響の少ない8水域のデータを用い、ウナギの釣獲率を調べ、8カ所のうち7カ所で統計的に優位な資源の減少がウナギの釣獲率の低下が見られたとの結果が得られている。加えて、推定される3世代(24年間)当たりの減少率は79.2%~99.9%と結論付けられている。

 現在ワシントン条約に掲載されているヨーロッパウナギは、国際自然保護連合(IUCN)のレッドリスト(絶滅危惧種リスト)では、事実上最も深刻度の高いカテゴリー(「深刻な危機(Critically Endangered: CR)」)に分類されている。IUCNの基準では、個体群減少の原因が不明または緩和が困難な場合、3世代にわたる減少率が80%以上の種が「深刻な危機」に分類されたが、ニホンウナギの3世代減少率は、ヨーロッパウナギと同程度、ということになるだろう(Kaifu et al. 2025)。

不都合な真実隠さずウナギの保護を提唱せよ

 最新の科学的知見からも、ニホンウナギの減少は明らかだ。ウナギについては、密漁や密輸などの問題が蔓延していることは、以前の拙稿「ウナギの密輸を“黙認”する日本…国際的な取り締まり強化にも官業で「反対」、このままでは食べられなくなる」「スーパーに並ぶ「中国産」ウナギの蒲焼きはどこから?取引を覆う黒い闇」でも指摘した通りである。

 今回ワシントン条約で提案されているのは、取引の禁止を意味する附属書Ⅰではなく、合法的で持続可能な取引であれば取引が可能な附属書Ⅱの掲載提案である。附属書Ⅱに掲載された場合、商業目的の輸出入自体は可能だが、輸出国側が、①輸出される動植物が自国法令に違反して入手されたものではないこと、②当該輸出により種の存続が脅かされることがない、と認めた上で輸出許可証を事前に提出することが条件となっている(第4条)。

 もし掲載されたならば、蔓延するウナギの密輸を阻止するための大きな武器となるだろう。日本のウナギ業界や水産庁は、よもや蔓延している密輸を容認したいというわけではなかろう。ならば、先頭を切って掲載に積極的に賛成すべきではないか。

 我々が望むのは、持続化可能なウナギの利用である。そうすることにより、先代より継承してきたウナギの食文化という伝統を、後世に伝えることもできる。

 そのためにも、今こそ日本はウナギの保全にリーダーシップを取るべきである。都合の良いデータだけをピックアップして、不都合な真実を隠すことは、もうやめようではないか。

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