2025年12月6日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2025年11月14日

 一連のトランプ大統領が中東の問題に対する現実的なアプローチに対してそれなりに一定の成果を得ている点は評価されても良いが、トランプ大統領の真意が自己のノーベル平和賞受賞にあるのではないかとの疑いも拭えない。もし、トランプ大統領の個人的な野心のために中東の諸問題を踏み台にしているとすれば、彼の行っている仲介外交の成果の永続性にますます疑問が生じる。仮にノーベル平和賞を受賞してしまえば、面倒な中東の諸問題解決に対する熱意がなくなるだろう。

最大の障害

 さらに、トランプ大統領の中東外交がある程度の成果を挙げているのはその現実的なアプローチのお陰であり、その資質によるものではないという指摘には同意するが、しかし、トランプ大統領の中東問題解決への努力の最大の障害は、その資質だと考える。つまり、「予測不可能性」の問題とその飽きっぽい性格だ。

 「予測不可能性」によりトランプ大統領の言うこととやることがコロコロと変わってしまっては、交渉相手はまともに交渉できなくなり、その結果、「信頼関係」は構築されない。パレスチナ問題、イランとイスラエル・米国の対立、さらに、顕在化しつつあるシリアを舞台としたイスラエルとトルコの角逐という難しい問題は、今回のガザの停戦やイスラエルとイランの衝突の停止のように一時的な解決は可能でも、永続的な解決をすることは不可能だろう。

 そして、トランプ大統領が中東の諸問題を解決することに飽きてしまえば、元の木阿弥となってしまう。飽きっぽいトランプ大統領が何時までその関心を中東に向け続けていられるかは神のみぞ知る話だ。

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