増える電力需要
生成AIの利用が急速に広がっているが、文章、画像などを作り出す生成AIは多くの情報を基に成り立っている。その利用にはデータセンターでの計算、学習が必要だ。
世界のデータセンター数の半分を持つ米国と大規模なデータセンターが多い中国が2大生成AI、データセンター大国だ(図-4)。
電力需要が伸び続け1人当たりの電力消費量がほぼ日本に並んだ中国と、電力需要が停滞していた米国を中心に主要国のデータセンターの電力需要は爆増すると予想されている(図-5)。
多くの予測があるが、米国では今の年間4兆3000億キロワット時(kWh)の需要が30年に1兆kWh増える予想がある。日本でも発電量が40年に最大2割増えると予想されている。
GAFAMと呼ばれる大手テック企業は、生成AIを支えるデータセンターの建設計画を次から次に発表している。
24時間365日稼働するデータセンターを支えるのは、再エネ電源だけでは無理だ。原子力、天然ガス火力、石炭火力、全ての使える電源を利用しなければ供給できない。中国は過去10年では最高の数の石炭火力建設を進め(「過去最高となった石炭消費!中国・インドとAI需要が押し上げる火力発電、遠のく脱石炭 」Wedge ONLINE)、米トランプ政権も石炭火力の利用を進めている。使える電源を全て使っても今の爆発する需要の下では電気は足らないかもしれない。
マイクロソフトはサプライチェーンを含め、30年脱炭素を目的にしていたが、目標達成は難しいと認めている。途上国の経済発展だけでなく、先進国のAIの利用も電力需要を増やし、脱炭素を難しくする。
温暖化対策は日本経済に寄与するのか?
国連のグテーレス事務総長は、「地球は沸騰している」と叫んでいる。COPを主催し、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が気候変動に関する報告書を作成する国連としては、気候変動は大きなテーマであり、喫緊の課題でなければ困るだろう。
気候変動の活動家にとっても、「気候変動終末論」は拠り所の一つに違いない。気候変動が人類に大きな影響を与えないならば、日本のマスコミ以外誰も注目しないCOPの場での「化石賞」に日本のマスコミすら注目しなくなるかもしれない。
世界の最優先課題は、温暖化ではなく貧困と疾病で、そのために資源を使えとの主張は当然に見える。
温暖化には温室効果ガスだけでなく、都市化なども影響している。また、気温上昇が生活と経済に壊滅的な打撃を与えるとも思えない。人類はかつて今より2、3度気温の高い時代を過ごしたこともあった。
筆者も、ウェッジから先月末「最新間違いだらけのエネルギー問題」を出版したが、その中でも、日本の優先課題をエネルギー価格と安定供給とし、その方策を議論している。
国民の約6割が生活苦を訴える国が、大きな資源を温暖化対策に割くことは不可能だ。温暖化対策、環境ビジネスを進めれば経済が成長するとの成長戦略は、失われた30年間に何回持ち出されたのだろうか。成果を生まなかった過程と結果は検証されているのだろうか。
ビル・ゲイツの戦略の転換を日本も見習い、経済成長と給与増の政策に資源を集中すべきではないか。


