2025年12月14日(日)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2025年11月26日

 トランプは平和を仲介する一方で威嚇もするというように、その外交政策は矛盾だらけだが、トランプ支持者は意に介さず、むしろ評価しているようだと 2025年11月10日付ワシントン・ポストで同コラムニストのマックス・ブートが言っている。

(AP/アフロ/gettyimages)

 トランプ大統領は平和の仲裁者か、それとも戦争の挑発者か。介入主義者か、それとも孤立主義者か。彼は種々異なる多くの要素を持ち、その外交政策を説明するのはほぼ不可能だ。

 トランプのやり方は自己矛盾し、一貫性があるように見えてもそれは人為的に造られたものだ。歴史に名を残し、ノーベル平和賞をとることを望んでいるトランプは批判など意に介さないだろう。

 また自らの政策の内容がしばしば矛盾することも気にしていない。決定は気分に基づいて行うようで、偽情報に踊らされることも多い。

 トランプの発言は予想外で現実離れしていることが多い。最近の二つの見出し、「トランプ、ナイジェリアへの軍事行動を示唆」、「トランプ、核実験再開を言明」はその典型だ。二つの記事はトランプのSNSへの投稿がきっかけで書かれた。

 10月29日、トランプは「他国が核実験を行っているので、米国も同様に核実験を行うよう戦争省に命じた。実験は直ちに始まる」と投稿した。ところが実際は北朝鮮を除き、21世紀になってから公然と核実験を行った国はない。

 最近ロシアが原子力巡航ミサイルと原子力水中ドローンの実験を行ったので、トランプが原子力推進と核爆発を混同した可能性はある。あるいは中ロが自国の核兵器の安全性確認のために超低出力の核実験を行ったかもしれないとの未確認の報告に言及したのかもしれない。しかしこれは脅威ではなく、従って核実験再開の理由にはならない。

 米当局は米国の核兵器維持のためにこうした実験は必要ではないと言っている。しかし米大統領が何か言えば、不確かな情報に基づくものであっても影響力がある。実際、ロシアは今や自分たちも核実験を行うと言っており、事態はトランプが目指すとしている非核化と反対の方向に進んでいる。


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