彼の視点では、冷戦終結以降の愚かな民主党・共和党の政策が国家を分裂させ、海外の危険に晒してきた。拙劣なグローバル化戦略は中産階級を空洞化し、防衛産業を破壊し、中国の台頭を助長した。
無知なエリート層は非現実的なユートピア的目標を追い求め、米国民を疎外した。無能な外交政策担当者は、戦争に勝利できず、民主主義を推進できず、平和を構築できなかった。
国内の課題はさておき、国際的な闘いに対する信頼と国民の支持を築くために、トランプは、彼の支持層のいくつかの核心的な信念に直接挑戦することなく、彼らを教育しなくてはならない。この観点からすれば、ベネズエラは天の恵みだ。
麻薬と不法移民の主要な供給源として、トランプ支持基盤が最も懸念する脅威を体現している。そして、ほとんどの孤立主義者でさえ、西半球における米国の強硬な行動を称賛する。
ベネズエラは国際的競争の場でもある。第二次世界大戦と冷戦時代、米国は西半球においてワシントンの権威に挑戦する外国勢力の動きに焦点を当てた。今日、ロシア、中国、イランはいずれもベネズエラで活動し、同国を拠点として米国の地域的立場を弱体化させようとしている。
さらに重要な点は、ベネズエラの石油埋蔵量はサウジアラビアを上回ることだ。ベネズエラを「現状変更の枢軸」から「チーム・アメリカ」へ転換すれば、世界の力関係に永続的な影響を与え、ロシアやイランのような国々がエネルギーを対米武器として利用する能力を低下させるだろう。
トランプは抑制主義者や孤立主義者などではない。彼は、世界から撤退しているのではなく。世界を再編(reshape)しようとしているのだ。
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トランプはジャクソニアン外交の系譜
国際政治学者でもあるミードは、トランプ外交を評価する傾向があったが、この論説では、軍事介入の可能性を否定しない対ベネズエラ政策を例としてトランプが孤立主義者ではなく、むしろ積極的に世界秩序を再編成(reshape)しようとしている点を肯定的に強調している。そして、同氏は、そのトランプ外交を支える論理として、米国が危機に瀕しているとトランプが信じ込んでいる点を指摘している。
ミードは、2001年の著作で米国の伝統的外交思想をハミルトニアン(経済実利重視)、ジェファーソニアン(内政重視の孤立主義)、ウィルソニアン(対外的理想主義)、ジャクソニアン(名誉と安全の重視)に分類する論文を発表し、16年のトランプの当選後、トランプ外交がジャクソニアン外交の系譜に属すると指摘した。
ジャクソニアン外交の特徴は、米国民の名誉や安全を極めて重視し、これが害される場合には報復として軍事力の行使をためらわないが、一旦脅威が除去されればそれ以上の関与は行わない点にあり、その基礎には、文化やアイデンティティの重視、エリート層やグローバル主義への不信があった。
