2025年12月13日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2025年12月4日

 2025年10月16日付Economist 誌は、豪州は対中対抗姿勢を取り、新たな軍事同盟をパプアニューギニア(PNG)との間で署名したと書いている。

軍事同盟に署名したオーストラリアのアンソニー・アルバニーズ首相(右)とパプアニューギニアのジェームズ・マラペ首相(AAP/アフロ)

 10月6日、豪州とPNGの首相は、冷戦後初となるアジア太平洋地域での新たな軍事同盟を発表した。この協定により、両国は相互に防衛する義務を負い、そのために最大1万人のパプア人が豪州軍に参加することが可能となる。しかし最も重要なのは、この合意により、豪州はPNGの領土や重要インフラに対する中国によるアクセスに対し拒否権を持つことになったことだ。

 ここ数年、中国は警察官を派遣し、豪州周辺の島嶼諸国で深水港や滑走路への優先的アクセスを手に入れて来た。表向きは国内の治安維持や経済発展を目的としているが、軍事的に脅威になる恐れがあると懸念されてきた。今回のPNGとの協定は、豪州がアジア太平洋の安全保障で一層大きな責任を果たそうとする一連の条約の中で最新のものである。

 豪州のこうした新たな野心的な外交姿勢は、この地域への米国の関与についての不安の高まりに対する保険の意味もある。貿易交渉のためにトランプが習近平に譲歩し、豪州等が中国の圧力に晒される結果になるのではないかと懸念する声もある。さらに、米国防省は新たな防衛戦略を策定し、その中でアジアよりも西半球を優先するのではないかとの報道も不安を高めている。

 22年に発足した豪州労働党政権は、周辺地域の国々との新たな安全保障協定に10億ドル以上を投じることを決定した。昨年締結されたツバルおよびナウルとの協定では、両国が中国と安全保障上の取り決めを結ぶ場合に、豪州がそれを拒否できる権利を確保した。

 PNGは太平洋島嶼国の中では最大かつ人口も最も多い国である。今回のPNGと豪州の同盟は、中国に大きな打撃となる。


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