6月1日付エコノミスト誌は、シンガポールで行われたシャングリラ対話で、西側や日本からの批判に対する中国の反論は稚拙だったが、もはや中国にとってそうしたことは大して重要ではないのかもしれない、と報じています。
すなわち、中国の強硬な行動への懸念が高まる中、今回のシャングリラ対話(アジア安全保障会議)は、地域の不安に対処するのに絶好の機会であった。
一方、中国は、最初に演説するのが安倍首相と知った時は、最悪の事態と思っただろう。中国側の代表は、国防相ではなく、人民解放軍の幹部と傅瑩・元外務次官だった。彼らは、当然、安倍氏の演説にいきり立った。安倍氏は、名指しはしないが、最近の中国の行動を強く非難、対応として日本は地域の安全保障の役割を強化し、フィリピンとベトナムに巡視船を供与すると約束した。
続いて翌朝は、ヘーゲル米国防長官が、中国の南シナ海での「不安定化をもたらす一方的行動」による領有権の主張を非難し、他方、安倍氏の演説を支持し、米国のアジア回帰を強調した。
ヘーゲルには、3日前のオバマ大統領の外交演説に対する同盟国の失望を打ち消す意図もあったかもしれない。オバマはアジア回帰に全く触れず、テロが現在も米国の安全への最大の脅威だと述べて、米国のアジア回帰戦略への疑念が広がっていた。
しかし、中国は、オバマが同じ演説の中で、米国は「常に世界の舞台で主導する」、「同盟国の安全が脅かされれば…必要なら、一方的に軍事力を行使する」と述べたことに注目し、脅威を感じていたかもしれない。そこに、ヘーゲルがアジアにおける米国の指導的役割を明言したため、苛立った。
王冠中・人民解放軍副総参謀長は、用意した原稿から離れ、安倍とヘーゲルは結託して中国に敵対していると糾弾、「覇権主義と威嚇の言葉に満ちた」ヘーゲルの演説は「非建設的」であり、中国は「冷酷なファシスト的、軍事的侵略の復活」をけっして許さない、とこれは明らかに安倍を指して非難した。
しかし、後で具体的な質問をされると、王は答えられないか、あるいは訳のわからないことを言った。例えば、中国に南シナ海の領有権を与えるとする9点線に関連して、漢王朝に遡る歴史的領有権に言及し、現代の海洋法に遡及効果はないと示唆したが、そのことと9点線がどう関係するかの説明はなかった。