2025年12月23日(火)

医療神話の終焉―メンタルクリニックの現場から

2025年12月23日

「睡眠2~4時間」は問題外

 まず、最初に強調する。「睡眠2~4時間」は問題外である。関節リウマチを病む人なら、言語道断である。

 高市首相は、2025年11月13日の参院予算委員会において、「睡眠時間2から4時間」と語っている。加えて、以前から関節リウマチに罹患していることを公言していた。それにしても、「睡眠時間2から4時間」は誇張であろう。もし事実であるとすれば、自殺行為である。

 一般論を述べる。関節リウマチは、慢性炎症疾患である。治癒しない。できることは、症状の緩和だけであり、成否は生体の抗炎症作用を十全に発揮させられるかにかかる。

 睡眠は、もしそれが十分な時間確保できているならば、炎症性サイトカインと呼ばれる物質の過剰産生を抑制する。「睡眠時間2から4時間」ならば、逆にサイトカインは上昇し、慢性炎症が悪化する。睡眠を削れば、病状悪化は避けられない。

 慢性リウマチ患者の悩みは疼痛だが、睡眠不足であれば「より強く」痛む。疼痛抑制系(トップダウンで痛みを抑え込む系)の機能が低下するからである。炎症が同じ程度でも、痛みに敏感になり、朝のこわばりも悪化する。

 集中力・思考力・判断力も低下する。微熱も症状の一つだが、睡眠が不足すると、睡眠中に時間をかけて体温を下げるべきところ、下げきらないで朝を迎える。結果として終日熱感が続き、倦怠感とブレイン・フォグ(頭に霧がかかったようにぼんやりした状態)に悩まされる。

 薬剤は、薬効の土台を整えて初めて功を奏する。たとえば、大阪大学と製薬会社が共同で開発した治療薬のトシリズマブは、炎症性サイトカインの一つインターロイキン-6に対し、その作用を阻害することで、関節リウマチの炎症、疼痛、進行を抑える。しかし、この薬剤も、睡眠不足だと治療反応性が低下する。生体の炎症負荷が高止まりした状態となっているからである。

 関節リウマチという炎症性疾患においては、睡眠は休息ではなく治療そのものである。睡眠を削れば、「あえて治療を妨害する」ことになる。

政治家にワーク・ライフ・バランスはほとんどない、「ワーク=ライフ」

 それでも「働いて」×5を追求したい人はいる。政治であれ、ビジネスであれ、学問であれ、芸術であれ、最高のパフォーマンスを追求したいと思う人はいる。

 そもそも政治家にワーク・ライフ・バランスはほとんどない。これは、永田町の高市首相から、ローカルエリアの村議会議員に至るまで言える。

 政治家は、実現したい政治目標があり、社会課題を理解して、政策を構想し、そのための行動を組み立てる。したがって、政治とは、人間としての「意思」「価値」「人生観」を総動員する仕事である。

 多くの政治家が、休日も政策書類を読み、移動中も選挙区の課題を考え、余暇は政策分野の勉強をし、夢の中でも政策論議を戦わせている。政治家にとって、政治は使命であり、創造であり、生きる理由そのものである。


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