画家に対し、「仕事は何か?」「趣味は何か?」「休日には何をしているのか?」と問えば、すべての質問に「絵を描くこと」と答えるであろう。政治家も同じであり、この点は、仕事を創造として行うすべての人に言える。自分の仕事を、召命であり、天職であると考える人にとっては、「ワーク=ライフ」である。
6時間睡眠+日中の仮眠
政治家の場合、夜間、7時間の連続した睡眠をとることは難しいであろう。それでも医師の立場では、「夜間の主睡眠は、6時間未満でもよい」とは言えない。「2から4時間」など決してお勧めできない。
6時間確保できても、さらに条件が二つある。第一に、夜間睡眠の就寝・起床時刻を固定すること、第二に日中に仮眠をとることである。
ヒト(大人)に必要な睡眠は7時間とされるが、実は、「7時間連続睡眠+17時間連続覚醒」(単相性睡眠)は、農耕社会以降、とりわけ産業革命後の人工的産物の可能性が高い。狩猟採集民の研究(Yetish et al., 2015; Samson et al., 2017)を参照するなら、ヒトの睡眠のデフォルトは、「夜間の6-7時間睡眠+日中の仮眠」と考えられる。
この点は、他の霊長類にも言えることで、夜の長い睡眠に加えて、日中も頻繁にうたた寝をしている(準・多相性睡眠)。したがって、忙しい人は霊長類方式を採用すればよい。
夜間の主睡眠の固定は必須である。早起きが得意な人なら、思い切って「21時就寝、3時起床」としてもいい。大切なことは休日であっても起床時刻を変えないことである。
逆に、土日連続して午前8時まで眠ることをすれば、月曜日に5時間もの時差を前倒ししなければならない。週末のたびにドバイ(日本との時差—5時間)に行き、月曜日に帰国する時差に相当する(「ソーシャル・ジェットラグ」と呼ばれる)。なかなかこの時差は耐えられない。
5時間のずれはもちろんのこと、覚醒時間の質を高めるには、起床時刻の30分のずれすら控えたい。体内時計の調整力は加齢による影響を強く受ける。ソーシャル・ジェットラグに関する研究を参照すれば、60歳を過ぎた身体にとっては、起床時刻の差は極小化すべきと考えられる。
プロクラスティネーションを招く要因
もはや若さを失った身には、7時間もの長きにわたって睡眠を維持することはできない。同じく、17時間もの長きにわたって覚醒を維持することも難しい。
夜の睡眠は短縮し、日中の眠気は強まる。日中の眠気を我慢すれば、ブレイン・フォグが起き、プロクラスティネーションが続く。
プロクラスティネーションは、意志の弱さに由来するのではなく、覚醒水準の生理的な動揺に由来する。日中、集中力のレベルは、微妙に波打つ。これを根性と気合とコーヒーで乗り切ることはできない。
眠くなれば、人は誰も先延ばしする。先延ばし傾向が現れた時にはすでに思考力・判断力が低下している。ここで無理に決断すれば、必ず間違う。
