プロクラスティネーションは、生体の「今は意思決定を控えよ」というサインである。ここは、「決断するな」という身体の英知に耳を傾けるべきで、むしろ、積極的に疲労に屈服し、意識的に「先延ばし」すべきである。
「霊長類方式」の準・多相性睡眠
では、決断を「先延ばし」して、何を先にするか。仮眠である。霊長類に倣って、15分から30分程度の仮眠を、1日に何度かとればいい。
仮眠後は脳の霧は晴れ、本来の判断力・思考力が回復する。あれほどひどかったプロクラスティネーションは、いとも簡単に消失している。仮眠で失われた遅れは、覚醒後のロケットスタートにより十分取り戻せる。
多忙な政治家といえども、1日に20分程度の仮眠時間を探すことはできるはずである。睡眠を削る努力をするくらいなら、仮眠の機会をうかがう努力をした方がいい。
会議の合間の15分、車で移動中の40分、昼食後の30分、記者会見までの20分など、1日のスケジュールを見渡せば空き時間は見つかる。その時間に積極的に身体を横たえ、目をつぶることである。
付言すれば、日本睡眠学会等は、「15時までに30分以内の昼寝」を推奨していて、2、3回もの仮眠は推奨していない。この条件は、午後5時に仕事が終わる人ならよいが、夜もすることがある人には厳しすぎる。
筆者自身は、昼食後と夕刻の2回仮眠をとっている。夜の睡眠が6時間程度なので、不足分を昼寝で補わざるを得ない。医師には、診療に加えて、夜のデスクワークがある。これは「自己研鑽」と呼ばれ、義務ではなく、時間外もつかないが、ほかにすることもなく、長年の習慣なので、眠りにつくまでは続けている。
