2026年1月10日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2026年1月7日

タイの内政的な問題も

 昨年7月にトランプ大統領が強引にまとめた停戦協定は早くも綻び、タイの国境紛争は再燃している。トランプ大統領の強引な調停でタイ・カンボジア国境紛争が終結しないのは、そのアプローチにある。

 つまり、紛争というのは、その原因があり、目先の衝突を止めることは重要だが根本原因を解決しなければ、紛争が再燃するのは不可避だろう。しかし、6月のイスラエルのイラン空爆もそうだったが、トランプ大統領は紛争の根本原因の解決には関心がなく、衝突を止めることで満足している。

 タイとカンボジアの国境紛争の原因は、19世紀にカンボジアを植民地支配したフランスが引いたタイとの国境線にあり、その問題を解決しない限り紛争が再燃するのが必然だ。もっとも、この国境紛争については、フランスも関わる話なので、紛争の再発、激化を抑止することは可能でも、根本的な解決は不可能であろう。

 今回の衝突が始まった時点では、ペートンタン首相とフンセン元首相との電話会談におけるペートンタン首相のカンボジア側に宥和的な発言をカンボジア側がリークして同首相を失脚させたことに象徴されている通り、カンボジア側が仕掛けたのではないかという印象を受ける。しかし、現時点ではタイ側が内政上の理由から国境紛争を利用しているように見え、再びトランプ大統領が関税で脅かしても衝突の拡大は不可避ではないだろうか。

 まず、タイは、12日に下院を解散し、来年2月までに選挙を行わなければならない。これは、タクシン首相の娘のペートンタン首相が、カンボジアとの国境紛争に関連して失脚した後、中道保守派のアヌティーン氏が後継首相となるために、「不敬罪の見直し」、「徴兵制の廃止」等の若年層の期待する政策を主張して支持を集めている国民党と連立を組むための条件だった。

 前回の2023年の選挙では、国民党の前身の前進党が第1党となったが、軍を初めとした保守派が、既得権を守るために(不敬罪の見直しは、王室の権威を弱め、ひいては王室の権威に依存する保守派の弱体化に繋がるし、不敬罪は民主化勢力を抑え込む強力なツール。徴兵制の廃止は軍の弱体化に繋がる)強引に国民党の党首を失脚させ、06年の軍事クーデターで失脚して国外亡命を続けていた仇敵タクシン首相と野合して、ペートンタン政権を成立させた。


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