2026年1月12日(月)

日本人なら知っておきたい近現代史の焦点

2026年1月12日

 米国への麻薬の多くは中南米経由であり、ベネズエラもその片棒を担いでいるという批判が受け入れられやすいということもある。ベネズエラの軍隊がそれほど強くなく、米兵の犠牲を最小限に抑えて作戦が実施可能という点も重要である。

 そして何より世界最大の石油埋蔵量を誇る産油国であり、ベネズエラの安い石油が大量に手に入るようになれば米国内の物価が下がると主張できる。西半球に存在し米国からの距離が近く、トランプ政権が安全保障政策の柱と考えるモンロー主義に当てはまるのも魅力的であったろう。様々の条件を勘案すると一粒で何度もおいしいのがベネズエラであった。

気になるMAGA派の反応

 そこで懸念されるのが、外国への介入を嫌うMAGA派(Make America Great Again:米国を再び偉大にする運動に賛同する人々)に拒否感を示されるのではないかという危惧である。実際、大きな犠牲を払った上で撤退に終わったイラクやアフガニスタンへの侵攻をトランプはこれまで散々批判してきた。

 「新たな戦争は始めない」「外国に介入しない」「外国の体制変更は目指さない」などと訴えることで、これまで外国での戦争によって米兵が死亡し莫大な戦費が消費されるのを苦々しく思っていたMAGA派を味方につけて選挙に勝ってきたのである。2期目の勝利宣言したときも「戦争を始めたりしない。戦争を終わらせるつもりだ」と述べていた。

 今回のベネズエラへの介入においてこれまでの外国介入反対の立場との整合性をトランプはどのように説明し、支持者たちを納得させようとしているのだろうか。なにより強調しているのがベネズエラの石油である。

 ベネズエラから安い石油が入ってくれば国内の物価、中でもガソリン価格が下がるという主張は、魅力的に聞こえるだろう。また、今回の作戦は短期間に終わり米側の負担も少なかった。

 25年6月のイラン爆撃当時も、MAGA派にそっぽを向かれるという可能性が喧伝されたが、半年経ってすっかり忘れさられた様相である。今後地上軍が投入されて長引くなどといったことにならなければ、MAGA派が割れるということにならないだろう。

 実際、共和党支持者は多くが支持しているように見える。FOX Newsのローラ・イングラムはマドゥロ大統領の拘束を「まさに典型的なMAGA」と言い切ったし、保守系司会者のショーン・ハニティは、「米国と世界はより安全で自由な場所になった」と述べた。

 MAGA派の中で最も孤立主義的部類に入るスティーブ・バノンも「見事で目を見張る一撃」と評した。より正直だったのは、リバタリアンのカット・ティンプフで「外国に行って、指導者を捕まえて爆撃し、これは戦争ではないという。わけがわかりません」と述べた。

トランプがあえて見せる本音

 積極的に批判したのは、昨年トランプと袂を分ったマージョリー・テイラー・グリーン前下院議員である。今回の作戦に対して「うんざりしている。(米国)国民のためにならない。潤うのは大企業、銀行、石油会社の重役だけだ」と公に発言した。

 12月に下院で民主党議員が中心となってベネズエラへの軍事行動を禁止するとの決議を通過しようとして僅か2票差で否決された時、賛成した共和党議員はわずか3人で、そのうちの1人がグリーン議員だった。ほとんどの共和党議員は、トランプの顔色を窺ったのである。


新着記事

»もっと見る