ペルーの弁護士、ホルヘ(58歳)は「これを機にベネズエラ移民の問題が少しは解決してくれれば」と言う。「ペルー人はベネズエラから逃げてきた大量の移民に疲れ切っており、早く帰ってもらいたいのが本音だからだ」
トランプもマドゥロも批判
米国の狙いについては、やはり原油奪取を挙げる人が多数を占めた。
「エゴと権力の問題だ。トランプはマドゥロを誘拐したのではなく、ベネズエラという国を誘拐した。マドゥロ逮捕が狙いなら、彼が過去に米国に入った時にいくらでもできた。やはり資源を奪い取るため領土を侵すのが狙いだと思う」(コロンビアの英語教師、ガルビス、43歳)
「主目的は石油奪取だ。トランプは選挙活動を支えた石油実業家に報いるつもりだろう。もちろん、マドゥロが隠し持つ金塊やビットコイン(未確認)も狙いのはず。トランプにとりベネズエラ民主化などうでもいいのだ」(先述のディアス)
「民主主義のためではない。天然資源を私物化するためだ。トランプはラテンアメリカに、とても危険なメッセージを送っている」(同国自営業、ダニア、52歳)
米国批判と同時にマドゥロを罵倒する人も少なくない。実態はどうあれ、彼に「独裁」や「凶悪」という形容詞をかぶせる。
コロンビアの元私立学校教員サルゲロ(65歳)はこう話す。「ベネズエラの汚職政治家に嫌気がさした国民が(1992年にクーデター未遂を起こした軍の元中佐)チャベスを支持し、マドゥロはチャベスの死(2013年)で手にした権力を手放さなかった。マドゥロ政権に抑圧された人々の善意が米国に利用されたのが残念だ」
米国で40年勤務し退職後に帰国したコロンビア人、ナンシー(68歳)は「マドゥロの残虐行為を擁護するつもりはないが、どんなに凶悪な人物でも適正な手続きを受ける権利がある」と言う。「正義が機能するかは別にして、国際的な場で裁判にかけるべきであり、一国や私たちが勝手に裁くものではない」
「マドゥロは米国へのあらゆるアクセスを封鎖されていたから、失脚は時間の問題だった。米国は政治、軍の圧力だけでなく、マドゥロ政権の中枢に潜入者を送り情報を得ていたはず。だから短期間で軍事作戦を成功させることができたのだ」(先述のホルヘ)
「チャベスが語った『変革』という名の幻想は結局、純粋で過酷なスターリン主義に変貌した。彼らはそれを『21世紀の社会主義』と偽り、『市民と軍の社会同盟』だと宣伝するが、それに従わざるを得ない国民はいまも不幸の極みだ」(先述のカルロス)
右傾化と反米意識は?
今回の事態はこの先、周辺国にどのような影響をもたらすのか。
地域全体に親米右派の声が広がるという意見が目立つ。「南米ではすでに右派政権が増えており、7月の選挙でペルーも親米右派になるだろう」(先述のホルヘ)
「コロンビアでは議会選(3月)と大統領選(5月末で決選投票は6月)を控えている。左右対決になるが、これまでの統治への不満から、いまの左派政権側の候補者が勝つことはない」(同じくカルロス)
「コロンビアでは(ジャーナリストの)ビッキー・ダビラやアベラルド・デ・ラ・エスプリエジャら極右の次期大統領候補がトランプを支持し、コロンビアへの介入を米国に求めている。でもコロンビア国民はペトロ大統領のおかげで政治的に目覚めている。そう簡単に極右に傾かないはず」(同ナンシー)
