2026年1月23日(金)

Wedge REPORT

2026年1月23日

 また「屋外の肉体労働のイメージ」や「なんとなく怖いと思っている」といった声もあり、昔ながらの建設業のイメージが建設業の忌避をもたしているのかもしれない。

 その結果として、沿岸地域の建設企業では、中途採用が中心とならざるを得ない。筆者がヒヤリングをした企業でも「若い子がそもそも来てくれない」(土木企業)や「高校に出前授業行きましたけど、なかなか上手くいきません。昔は小学校とかで重機体験とかあったけど、最近はそれも少なくなっている」(総合建設業)といった声がこぼれる。「この前、ハローワーク経由で採用した人が良くて、ハローワークとの関係も大事にしている」など、何とか人材確保に努めている状況である。

建設人材輩出高校の偏在

 人材輩出高校がないことも人材確保を困難にしている。現在、岩手県で土木・建築科のある高校は4校あるが、このうち沿岸部の高校は久慈工業高等学校のみである。その久慈工業高等学校も北部にあり、南北に長い岩手県で南部沿岸に位置する釜石、大船渡、大槌の生徒が土木・建築科に進む場合、内陸部の高校に進学する可能性が高い。そして「沿岸から内陸の土木科のある高校に行けば,そのまま内陸に就職し戻ってこないことも考えられる」(岩手県沿岸地域土木科高校ベテラン教員)のである。

 「土木・建築」といった専門課程を持つ高校は全国どこにでもあるわけではない。こうした地域特性も建設人材の空白地帯を作り出す。

 日本の建設産業は、バブル崩壊以降、民間投資の減少や公共工事の削減で停滞・縮小局面にあった。そうした中で、低価格受注競争による採算割れ工事の増加、賃金の低下や未払い、短工期の強要による長時間労働の蔓延などが起きてきた。

 市場原理主義が建設産業へ猛威を振るう中で、私たち国民に不可欠なはずのエッセンシャルワーカーである建設就業者が減少してきたのである。ここ10年間は、産業を上げての労働条件の改善を進めているが、日本全体で人材不足が進む中で、建設企業は少ないパイ(若者)を取り切れていないというのが実情と言えよう。

建設就業者を“増やす”には

 建設就業者の減少傾向をどう食い止めるべきか。第1に、若者が建設業を知る機会を積極的に作ることである。先の高校生調査でも建設業を知る方法として現場見学会の開催、SNSによる魅力の発信、重機などの体験イベント等があげられていた。こうした機会を積極的に作ることで若者の入職に繋げていく必要があろう。

鹿児島県建設業協会奄美支部・県大島支庁建設部による親子向け現場見学会「おがみ山トンネルウオーク」の様子(全国建設業協会(全建)Xより)

 第2に、インフラや公共施設の老朽化対策や耐震化を進めることである。能登半島地震では上水道等の復旧に4カ月がかかり、この要因として耐震化の未実施が明らかになっている。1年前に起きた埼玉県八潮市の道路陥没事故も下水道管の老朽化が引き金となっている。

 文部科学省によると、公立小中学校施設は、24年5月1日現在、約6割が築40年以上を経過し、その7割以上が改修を要するなど、校舎等の老朽化が大きな課題となっている。老朽化対策や耐震化は自治体財政の逼迫を背景に進んでいないが、国が予算を取って積極的に進めることで、街の安全と教育環境を守り、防災対策にもなり、地方の建設企業の工事受注の増加にもつながる。


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