2026年1月23日(金)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2026年1月23日

民意との温度差

 以上は外交面の理屈だが、中国国民の“感情”がそれに従うかは別の問題だ。高市政権発足時は「あの保守的な日本で初の女性首相が誕生」と中国では大きな注目を集めたが、衆議院解散については大きな話題とはなっていない。SNSを見ても「選挙でどうなろうと、日中関係は変わらない」といった冷めたコメントが目立つ。

 また、中道改革連合についても冷ややかだ。立憲民主党の野田佳彦代表は12年の尖閣諸島日本国有化の際の総理大臣であり、日中関係に大きな打撃を与えた人物である。それをいきなり「敵対的な高市首相と、交渉相手となりうる野田代表」という対比で差し出されても、なかなか受け入れづらいという側面はありそうだ。

 一方で、日本とのビジネスを行っている中国企業関係者からは政権交代に期待する声も上がっている。昨年来の日本「制裁」で一番ダメージを負っているのが彼らだ。日本行きの航空便減便や無料キャンセルで費用を負担したのは中国の航空会社である。そうした大企業だけではなく、個人レベルでも被害は出ている。

 日本で民泊を経営するA氏はこれまで中国人観光客だけで商売が成り立っていたが、現在は米国や韓国、東南アジアの観光客を受け入れようと躍起になっている。ただ、「中国人相手なら、どういう設備でどういう宣伝文句にすれば人が集まるかはわかりますが、それ以外の国を相手にすると勘所がつかめない」とぼやいている。

 宣伝だけの問題ではない。中国人旅行客の民泊利用は大人数での宿泊が多く、欧米人相手では大部屋の民泊はなかなか予約が取れないのだという。

 中国ロボット企業のマーケティングを手がけるB氏は、「せっかく日本のテレビで取りあげてもらえることになったのに、中止することになりました。中国での炎上リスクを回避するためです」と明かす。メディアに売り込むための仕込みが無駄になったとのため息をもらした。

 実は筆者も毎年1月に中国企業主催のイベント通訳を依頼されてきた。今年はなかなか誘いがこなかったが、日中関係をかんがみてイベント開催を慎重に検討していたのだという。筆者も日中関係悪化で仕事を失う人になりかけていたようだ。

 貿易相手国の確保という中国経済の要請にせよ、大企業から中小零細個人まですべての商売人たちにせよ、日中関係改善を望んでいる点では一致している。ただ、中国共産党中央はその逆にエスカレーションを志向しているのだから悩ましい。2月の総選挙がどうなるのかという変数も加わり、日中関係の先行きは不透明さを増している。

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