2026年2月3日(火)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2026年2月3日

 さらには、関税の法的根拠を何処に求めるのかの問題もあったかも知れない。恐らくは、「相互関税」と同じく 国際緊急経済権限法(IEEPA)に求めるつもりだったのかも知れないが、同法の発動要件である「緊急事態」は何かが不明である上、同法を援用して関税を課すことの合法性が疑われている。

 NATO加盟国に対する関税も常軌を逸していたが、事の本質はデンマークとグリーンランドの反対を無視してグリーンランドを奪取し領有しようとするトランプの横車にある。トランプは「グリーンランドおよび北極圏全体について将来の取引の枠組みを作った。この解決策が完結すれば、米国およびNATO諸国全部にとって大きなことになろう」と述べたが、ダボス会議の演説では、グリーンランドを防衛出来るのは米国だけだとして、買収交渉を要求した模様であるので、グリーンランドの領有を諦めた訳ではないようである。武力行使の可能性は否定したようである。

 NATOの報道官は「枠組みについての同盟国の議論は北極圏の安全を同盟国、特に北極圏の 7つの同盟国の集団的努力を通じて確保することが焦点となる」「ロシアと中国がグリーンランドに経済的・軍事的に足場を築かないことを確保することを目的とするデンマーク、グリーンランド、米国の間の交渉は継続する」と述べたが、この種のNATOの努力は徒労に終わる公算が大きい。トランプの動機はグリーンランドと北極圏の安全の確保だけにあるのではなく、 NATOのような集団防衛体制で安全を確保することに価値を見出していないのだとも思われる。

トランプの野望

 トランプは2025年の就任演説で領土拡大の野望にあからさまに言及している。彼にはアラスカ買収に匹敵する遺産を残したいとの野望があるようである。

 トランプの戦争は基本的に自身の好みによって選択する「選択の戦争」と言えよう。ここに、どうやってNATOや日米同盟という同盟に彼をコミットさせるのかという深刻な問題がある。

 米国にとっての同盟の価値を目に見える形で高める必要があるが、二国間の同盟はまだしも、NATOとなるとトランプには理解が困難であるように見える。トランプは NATOに肩入れする形でのグリーンランド防衛には関心がない。NATOの命運がトランプの勝手な領土拡大の欲望の巻き添えになる危機は去っていないと思われる。

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