2026年2月3日(火)

Wedge OPINION

2026年2月3日

 その後は外務省のような専門試験によって、情報収集や分析に長けた若者を採用するやり方も考えられる。あとは部内にインテリジェンスの研修機関を設置し、そこで教育・訓練を徹底することも必要である。現在、日本政府内にインテリジェンス研修のプログラムは皆無に等しい状況であるため、この点についてもきちんとしたものを整備していくことが必要になってくる。

情報を〝そのまま〟にせず
政治家が活用せよ

 内閣情報局、スパイ防止法、対外インテリジェンス組織の制度が整備されたとしても、それだけでは不十分だ。インテリジェンスにとって最も重要なのが、外交・安全保障分野における国家戦略であり、この戦略を基に、政治指導者はインテリジェンスの要求を発する。そして情報要求に基づき、対外インテリジェンス組織は情報を集めて分析することになる。つまりどれほど優秀な情報組織があっても、政治指導者がそれを使いこなすことができなければ、宝の持ち腐れとなってしまう。

 例えば英国のインテリジェンス制度は1930年代後半にはほぼ整備されていたが、40年まで首相を務めたネヴィル・チェンバレンは、対外インテリジェンスを軽視してドイツとの戦争を招いた。しかしその後、首相となったウィンストン・チャーチルが、既に整備されていたインテリジェンス制度を使いこなすことで、英国は第二次世界大戦に勝利することができたのである。

 日本でもこれまで首相がインテリジェンスに無関心な状況が続いてきた。日本では政治家が首相になって初めてインテリジェンスに触れることになるが、慣れてきた頃には大抵、退陣の憂き目に遭い、またインテリジェンスに関心のない政治家が新たな首相となって同じことが繰り返されてきたといえる。 

 最近の例外は、第二次安倍政権であり、安倍氏は外交・安全保障政策のためインテリジェンスを活用することができた。ただしそのために当時の谷内正太郎・国家安全保障局長、北村・内閣情報官らが頻繁に首相ブリーフィングを行い、政策とインテリジェンスの関連性を訴えたことが大きかった。さらに当時は自民党の部会でもインテリジェンス関係のものが設置されており、ここでも北村情報官が政治家にインテリジェンスの重要性を説明していた。

 このような事務方の尽力によって、安倍氏はインテリジェンスの重要性を認識し、それを国家安全保障会議における政策決定に繋げることができたのである。つまり将来政治指導者を目指すような政治家は、インテリジェンスの活用について前もって習熟しておく必要があり、そのような勉強の場を設けておくことも重要だろう。

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Wedge 2026年2月号より
世界を揺さぶるトランプ・パワー
世界を揺さぶるトランプ・パワー

1月3日、トランプ大統領は自身のSNS「トゥルース・ソーシャル」で、ベネズエラに対する攻撃を成功させ、マドゥロ大統領を拘束したと発信し、世界に衝撃を与えた。自らを「平和の使者」と称していたトランプ氏だが、戦火の口火を切った格好だ。トランプ氏にとっては、犯罪者を拘束するための法執行をしたにすぎないという認識なのだろうが、議会の承認を得ていないほか、国際法に違反しているという指摘もある。 独裁者を追放するという帰結と、そのプロセスは別に考えなければならない。そうでなければ、「力による現状変更を容認しない」という、戦後80年かけて世界が営々と築き上げてきた共通認識を崩したロシアを誰も批判できなくなる。 そもそも、トランプ氏は積み上げられてきた「ポリティカル・コレクトネス」を否定し、ルールを決めるのは自分だと言わんばかりの行動をとってきた。まさに「トランプ・パワー」である。 そんなトランプ氏を大統領に再度選んだ、現在の米国の政治経済、外交、そして思想などをつぶさに見ていくと、我々が知っているかつての米国から大きく変貌していることが分かる。 それでも米国が日本にとって重要な同盟国にあることに変わりはない。米国とどう向き合っていくのか。世界だけではなく、日本こそ問われている。


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