再審を起こす弁護士に人権派の穂積英子(山本未來)。彼女に加わるのが、本ドラマのヒロインである東京の弁護士事務所を辞めて地元に戻ってきた、弁護士の小野崎乃亜(鳴海唯)。
小野崎は、東京時代に交通事故を起こしたとされる被告に対して「罪状を認めたうえで、情状酌量を求めるのが早い」と、実は無実の被告を追い詰めて涙を流された、苦い記憶から地元に戻ったのだった。東京の中央官庁の有力官僚だった、父の威光もあって地元企業の顧問弁護士を中心に働いていた。過去の経験から刑事事件はやらない主義を貫いてきたが、地元弁護士会によって国選弁護士をする中で刑事事件に再び取り組むようになった。
安堂が発達障害であることは、小野崎(鳴海)はもちろん知らないのだが、安堂が真実を求めるこだわりをみることで彼を最も理解するひとりとなった。
ヒロインとして、鳴海の演技は魅力的である。これから映像界で注目を集めていく素材と感じる。立ち飲み屋で出会った地裁の部長判事の門倉(遠藤憲一)と飲みながらくだを巻く。安堂が夕食のナポリタン・セットを食べる行きつけの喫茶店に待ち伏せしては、自分が集めた証拠について意見を聴く。
個性の輝く場所を見せるNHK「ドラマ10」
本シリーズ「TV読本」において、予告と登場人物について紹介するのはあまりない。五輪の順延と、なにより本ドラマが今季の最高傑作であるの補助線となればと思ってのことである。
安堂の発達障害という個性が、かえって法廷における真実を解き明かす「こだわり」となっているのが、本ドラマの魅力である。どんな個性も光輝く場所はある。
NHK総合のよる10時のドラマ枠「ドラマ10」は、そんな視点の作品が多いように思う。今回のドラマは、『宙わたる教室』(24年)の制作スタッフが再び制作陣に集結した。定時制高校を舞台にして、優秀な天体物理学者である窪田正孝が、老若男女の生徒たちと科学部を作って火星のクレーターがどのようにしてできたのか、仮想実験を繰り返したうえに普通制の高校の科学部と発表を競うまでになる。
今や若手女優NO.1といってもよい河合優美がヒロインとなって、テレビ界で注目を集めた『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』では、ダウン症の弟と車いす生活になった母親が明るく働く場所をみつけていった。
万巻の書物や識者の講演、コメントよりもドラマの力が、社会を変えることはある。
