米国のトランプ大統領は、自分で蒔いた種とはいえ、原油価格の値上がりを避けたいはずだ。24年の選挙期間中、就任後1年でガソリンを含むエネルギー価格と電気料金を半額以下にすると主張していた。
米国は、石油、天然ガス、石炭全て自給できるエネルギー大国だが、米国の原油価格WTIは、ブレントなど世界の原油価格にリンクしている(図-12)。米国のガソリン価格は、当然だがWTIの原油価格に影響される(図-13)。
WTI原油の先物価格が1週間で3割以上上昇し3月6日に1バレル当たり90.90ドルに達したことを反映し、米国のガソリン価格も1週間で30セント以上上昇し、3月6日に1ガロン当たり3ドル32セントになった。
11月の中間選挙を控え、支持率を上げたいトランプ大統領は、原油とガソリンの価格の引き下げに強い動機を持つ。2月の一般教書演説では「ガソリン価格が大きく下落し大部分の州では1ガロン当たり2ドル30セント以下だ」と主張し、多くのメディアが事実に反すると指摘した。
イラン攻撃後には「ガソリン価格上昇を心配していない。すぐに下がる。紛争が解決すれば前より安くなる」とのトランプ大統領の発言が伝えらえている。一方、「ガソリン価格が少し上昇するよりも軍事行動は重要」と発言も揺れている。
3月6日にトランプ大統領は、SNSに「イランの無条件降伏以外はありえない。そうすればイランを再度偉大な国にする(Make Iran Great Again MIGA!)」と投稿した。
イランからは、無条件降伏を拒否すると同時に、アラブ周辺諸国への攻撃について謝罪があった。LNG施設、製油所への攻撃は止まるが、ホルムズ海峡の封鎖はまだ続く。
日本は中長期的な脱炭素化を
米国はホルムズ海峡を通過する船舶の米軍による護衛と米政府保証の海上保険の提供を提案している。1日当たり100隻を超える通過船舶すべての護衛は米艦船の数から難しいにせよ、米国はやがて実施するのではないか。
封鎖が長引き原油価格が高止まりすれば、ガソリン価格を引き下げるトランプ大統領の公約実現はますます難しくなり、支持者の離反を招く。
一方、ロシアプーチン大統領は、混乱を長引かせたいはずだ。代替需要が期待できる上に原油価格の上昇はロシアの財政を大きく助ける。対イランでミサイルが消費されれば、ウクライナに渡るミサイルが減り、防衛力が弱体化する可能性もある。ロシアは、ほくそ笑んでいるに違いない。
米ワシントンポスト紙は、ロシアはイランの情報機関に米艦艇と航空機の位置を含む情報を提供していると報じた。しかし、ロシアはイランの側面支援以上の行動は難しい。
イランが保有する機雷をまく、あるいは自爆ドローンを利用し封鎖を強化することはあり得るが、米国が封鎖解除に動く可能性も高い。それでも封鎖解除ができないと、原油価格の上昇に追い詰められたトランプ大統領が、イランと取引する可能性も浮上する。
イランの封鎖が続けば、日本を含む世界の多くの国で、ガソリン価格、電気・ガス料金、化学製品の価格は上昇し、国によっては停電も覚悟することになる。トランプ大統領が多くの国の経済を左右する事態が続くことになる。
日本の中東依存率を短期で引き下げる方策はなさそうだが、中長期には輸送部門の電化を進め脱化石燃料を図る一方、電源の脱炭素化を進めるしか有効な策は見当たらない。
そのためには、原発の再稼働に加え、コスト負担が少ない再エネに限って導入も進め、生成AIの利用、データセンター増設による電力需要増を脱炭素電源で支える体制作りも急ぐ必要がある。


