2026年3月17日(火)

インドから見た世界のリアル

2026年3月17日

インドに逃げ込んだイラン海軍艦艇

 今回のインドの船2隻がホルムズ海峡を通過できた背景には、この共同演習ミランが関係している。アメリカとイスラエルが空爆を開始したのが2月28日。その時、この演習に参加するために、イランから3隻の軍艦がきていた。そして、3月4日、インドでの演習を終えて、インドの領海を出たイラン海軍のフリゲート艦「デラ」は、アメリカ海軍の原子力潜水艦に魚雷で撃沈された。

 イラン海軍の「デラ」が撃沈された地点は、スリランカ沖で、31時間航行すれば、アメリカ軍の基地があるディエゴガルシアを攻撃可能な位置にいた。それに、その後、イランに帰国する場合は、いずれにせよ戦闘に飛び込むことになるから、撃沈されたとしても不思議ではない。このアメリカの潜水艦には、教育目的でオーストラリア海軍の3人の乗員も乗っており、オーストラリア政府も事情を知っているようだが、オーストラリア政府も、攻撃そのものを問題視していない。

 ただ、共同演習のホストとなったインドにとっては、「客人を家の前で殺害された」感覚になったようである。そして、イラン海軍の残り2隻の内1隻、揚陸艦「ラバン」がインドに逃げてきたとき(もう1隻は補助艦艇「ブシャール」がスリランカへ逃げた)、これを保護した。イラン海軍艦艇と、乗員183人は、インド海軍の基地に滞在が認められたのである。

 結果、インドは、イランに対して強い外交カードを持った。もしイランが、インドの船を攻撃し、死傷者が出るようなことがあれば、インドは国内に滞在しているイラン海軍艦艇の滞在を認めずに追い出すことができる。イラン艦艇はアメリカによって沈められてしまうだろう。

 この外交カードを背景に、インドは今回、イランと繰り返し交渉を行った。結果、イランが、インドの船2隻のホルムズ海峡通過を許可する代わりに、インドは、イラン海軍の艦艇の乗員183人の内、約100人の帰国を手助けすることになったようである。いわば、「人質交換」のような状態といえる。

 こうして、イランによってホルムズ海峡封鎖が宣言され、各国の船が次々攻撃を受ける中、インドの船2隻は、攻撃を受けることなく、ホルムズ海峡を通過し、迎えに来たインド海軍の3隻の軍艦と合流したのである。

 インドの巧みな、臨機応変な外交が成果を上げた一例といえよう。

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