2026年4月3日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2026年4月3日

米国が核実験に踏み切る損失

 第三に、それでは、米側はどのように対応しようとしているのか。ヨー国務次官補などの事務方の発言は、トランプ大統領が発言した通り、中露と「同等の立場で」核実験を行うという点で一貫している。中国の核実験疑惑についての米側の見方が上記のようなものであるとすれば、米側の対応は、「数百トンの核出力の核実験」を行うことが考えられる。

 米国が最後に核爆発を伴う実験を行ったのは、1992年のことである。それ以来、米国はそうした核実験を行っていないが、代わりに、その「寸止め」である未臨界実験を34回行ってきている。

 未臨界実験とは、核物質(プルトニウム)を爆縮させて核分裂反応を起こさせるものの、核物質の量、形状などを調整することで、核爆発には至らない段階で核分裂反応が止まるように設計して行う実験のことである。米国は、こうした未臨界実験は、包括的核実験禁止条約(CTBT)が禁じる「核兵器の実験的爆発又は他の核爆発」に該当しないとの立場を取ってきている。

 米国が核実験を再開することとすると、核物資の量、形状などを調整して、数百トンの核出力の核実験を行うことが想定される。これは、核実験の世界では、上記の通り超小型と見なされるが、核分裂反応が爆発的に起こるという点で、明確に一線を越えるものである。米国としては、それを通じて、既に古いものとなっている核弾頭が正常に作動するかの確認や、新型核弾頭の開発を企図するものと考えられる。

 しかし、たとえ中国(やロシア)が核実験を偽装して行ってきたとしても、米国が核実験を再開することは、米国の利益にならないと考えられる。「核実験を行わない」という事実上の規範を意識して隠蔽して核実験を行うのと、おおっぴらに核実験を行ってこの事実上の規範を踏み破るのは意味が違う。米国が核実験を再開すれば、中国は「これで、手を縛られなくなる」と喜ぶであろう。しかし、事態はそうした方向に推移しそうである。

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