2026年4月10日(金)

Wedge REPORT

2026年4月10日

切り抜き職人として生きる道はあり得る?

――著作権侵害の論点はありながらも、YouTubeやTikTok*2というプラットフォームでは、元動画を短尺に編集した切り抜き動画が多く閲覧される現状にあります。それらは元動画の認知拡大に貢献したり、(ポリシー変更に揺れてはいますが)収益化をもたらしたりする流れも見られます。また、収益性は問わず、出演者を応援するために「拡散」したいというファンもいます。見方を変えれば、彼らも新時代のクリエイターの一種と定義できるかもしれません。彼らの存在や活動が、今後、適正あるいは適法に実現される可能性はあり得るのでしょうか?

 ここまで述べたように、単純な切り抜き動画は「適法な引用」に該当することも難しく、基本的に無許諾で行えば著作権侵害となる可能性は高いでしょう。そのため、切り抜きをする側としては、権利者の許諾を取ることが一つの解決策です。

 これに対する権利者側の考え方はいくつかあります。まず、切り抜き行為は一切認めず、削除や損害賠償請求といった権利行使をしていく。あるいは、切り抜き行為を認めるつもりはないが、費用的・時間的コストからそうした権利行使まではしない。もしくは、宣伝にもなると判断して黙認する。

――どう判断するかは権利者の側にある、と。

 その通りです。さらに、もし権利者として一定程度こうした利用を「認めよう」と思うなら、コンテンツ利用のガイドラインを設けたり、個別に利用許諾をしていったりすることも考えられます。

 例えば、切り抜き動画の制作は認めるが、「本人への誹謗中傷に用いたり、本来の趣旨から逸脱したりしない」「公式と誤解されないようにする」といったことや、商用利用・収益化の可否、あるいはその収益の権利者への分配といったルールを取り決めることです。こうしたルールを定めるYouTubeチャンネルは既にいくつもあります(例えばホロライブプロダクション*3の「切り抜き動画に関するガイドライン」など)。

 ルールに則って制作された場合は、本人から許諾を得たとみなせます。第2章(同人誌)でも出てきたことですね。

テレビ番組と「切り抜き動画」

――テレビ番組では、こうしたガイドラインを設けている例は従来あまり見ませんね。一つの試みとして、フジテレビが2024年8月に、TikTokとタッグを組んで「切り抜きOK」の番組を放送した事例がありました*4。この番組では「切り抜き動画ガイドライン」を設けた上で、視聴者が切り抜き動画を作成し、自身のSNSアカウントなどに投稿することが許容されました。

 YouTubeのコンテンツに比べて、テレビ番組は制作陣、キャストなど関係者が多いことも影響しているかもしれません。

 また、YouTubeであれば公式動画にすぐ飛べるのに対し、テレビ番組だと、切り抜き動画の放送分はTVerなどで遡って見られないケースもあります。このように、テレビ番組側としては、YouTubeチャンネルなどに比べて、切り抜き動画から「公式」であるテレビ番組にユーザーが遷移する期待度が高くないことも理由の一つでしょう。もっとも、これも時代によって変わっていくように思います。

――番組の出演者が「自分が出ているところはどんどんシェアしていいよ!」と言っていた場合ならOKでしょうか?

 番組映像の著作権は放送局など制作側が持っていることが通常なので、仮に出演者個人が「切り抜きしていいよ」と言っても、制作側が認めていなければ著作権侵害の問題が生じます。

――なるほど……。少し話がそれてしまいますが、テレビ番組の違法アップロードの中には、番組そのものの画面を縮小して端に寄せ、無関係な動画か画像が重ねられているものもあります。あれにはどのような意図があるのでしょうか?

 AIによる違法アップロードの自動検知を回避しようとする目的でしょうね。YouTubeなどのプラットフォームは、アップロードされた動画が既存の著作物(オリジナル動画)と一致しないかを自動で比較・検知するシステムを持っています。権利者側はYouTubeに検知してもらえるよう、自身の映像をYouTubeのデータベースに登録しておきます。

 そこで無断アップロード者側は、映像のサイズ変更、枠を付ける、反転させる、あるいは動画の途中に無関係な短い映像を挿入するなどの加工を施し、映像の同一性を変えることでAIによる自動的な「一致」の判定を回避しようとしているのです。再生速度を速く・遅くする処理がなされているものもありますね。

*2 TikTok 短尺動画を共有するソーシャルメディアプラットフォーム。音楽と連動したミームやトレンドが生まれやすく、楽曲のヒットにも大きな影響を与える。

*3 ホロライブプロダクション カバー株式会社が運営するVTuber事務所。二次創作ガイドラインを定めており、その中には「切り抜き動画に関するガイドライン」も含まれている。

*4 「切り抜きOK」の番組を放送した事例 2024年8月20日と22日の深夜に放送された、フジテレビとTikTokによるコラボ番組『1分deトレンドシェア キリヌキ可TV〜ウチのキリヌキはご自由に〜』。本番組では番組全編の映像に関して、ガイドラインを設けた上で、視聴者が切り抜き動画を作成(二次創作)し、自身のアカウントなどに投稿することを許容。さらに、番組公式TikTokアカウントにて、「切り抜き可」素材として放送後に本編映像をアップロードした。


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