もっとも、元の著作物が持つ表現の本質的な特徴部分をそのまま利用しているわけですから、仮にAIによる自動検知は回避できたとしても、そうした投稿動画が著作権侵害であることに変わりはありません。
「いつでも権利行使できる」状態の方が権利者側にとって好都合?
――権利者がわざわざ許諾のルールを定める動機とは何なのでしょうか?
実は、ガイドラインなどのルールを定めず、違法な投稿に「いつでも権利行使できる」状態にしておく方が、権利者側に都合がいいという考えはあります。「ルールを決めてしまうと、ルール内かどうか判断に迷うものが出てくる」「ルールを逸脱する投稿を放置しにくくなるが、権利行使をすればコストがかかる」といった発想です。
もっとも、権利者側にもガイドラインを定めるメリットはあるでしょう。一つは、切り抜き動画などのコンテンツがユーザーやファンを増やすためのツールとして使えること。権利者のガイドラインがあると、ファンは安心して切り抜き動画などを発信でき、ファンが有効なプロモーションをしてくれることになります。
切り抜き動画とは異なりますが、例えば出版社が、自社刊行の書籍について「SNS等で自由に使える書影ページ」を公開していることもあります。これもSNSやブログなどで感想やレビュー投稿を促す狙いですね。
もう一つは、違法アップロードを含む二次利用があふれている現状で、「望ましくない使われ方を防ぎたい」「収益の回収をきちんとしたい」といった考えに対応できることです。ガイドラインを定めることで、「使われ方」に一定のラインを引くことが可能です。また、「切り抜き職人」との間で、切り抜き動画による収益の分配を約束することで、収益回収を図ることもできます。
こうした二次利用からの収益化は音楽分野でも見られることです。YouTubeの仕様上、YouTube上での無断音源使用に対し、権利者は「差し止め」のほか「収益化(その動画からの収益を権利者に帰属させること)」を選択できるのですが、音源利用について収益化を選択するケースは多いと感じます。
――ファンとうまく共存していくためにも、「ガイドラインの制定」というのが一つの手段になり得るわけですね。
はい。特にファンからの発信も多い現代では、コンテンツをつくる側が自ら利用のルールを考えていくことの重要性が高まっていると思われます。
一定の利用を認めて自身の作品が広く知られるようにしていくか、もしくは、そうした利用のルールは定めずいつでも権利行使できる状態を残しておくのか。冒頭のご質問にあるように、ファンや職人を「新時代のクリエイター」と捉えるなら、彼らといかなるコラボレーションをするのか、あるいはあくまで一定の距離を保つのか。
著作権法は創作者の権利の保護と利用のバランスを図るルールを定めたものです。今後はクリエイターにも、自身の作品利用に関する保護と利用のバランスを自ら考えていくことが求められるのかもしれません。
