2026年4月6日(月)

家庭医の日常

2026年4月6日

シングルマザーの出生前診断

<本日の患者2>
R.S.さん、24歳、女性、コンビニエンスストア店員。

 「先生、出生前診断について教えてもらえますか。以前、私のお姉ちゃんが結婚する前に、先生が話してくれたって聞いたんです。私もそろそろかと思って」

 「そうでしたね。R.S.さんは、ちょっと順番が後先になっちゃったけど、まだ大丈夫です。『プレコンセプション・ケア』の一環として説明をしましょう」

 R.S.さんは、学生時代から付き合っていたボーイフレンドを最近交通事故で亡くした。そして、その彼との子を妊娠していることがわかり、悩んだ末に(私も悲嘆ケアと家族との相談に加わった)、妊娠を継続してシングルマザーとして生きていく道を選択した。ここで、もしこの子が重大な疾患を抱えていたら、自分の生活はさらに厳しくなると考えて出生前診断について興味を持ったと告白してくれた。

 『プレコンセプション・ケア』については、このシリーズで2022年10月に書いた『妊活する夫婦が知っておくべき健康のこと』を参照してほしい。本来は妊娠を計画する前からカップルで始めるのが理想ではあるが、R.S.さんの事情はそれを許さなかった。

 もし近未来にAIがもっと発達したら、出生前診断がターゲットとする胎児の染色体異常症などのそれぞれについて、わかりやすい解説動画が生成されてオンラインで視聴できるようになるだろう。それぞれの有病率(妊婦の年齢が影響することが多い)、検査の感度・特異度から計算できる「検査が陽性だった時にその疾患に罹っている確率」である陽性的中率(positive predictive value; PPV)、および「検査が陰性だった時にその疾患に罹っていない確率」である陰性的中率(negative predictive value; NPV)についても、理解しやすい教育ツールが生成されるだろう。

 比較的手軽な血液検査である非侵襲性出生前遺伝学的検査(non-invasive prenatal [genetic] testing; NIPT)の結果が陽性だった場合、「かなり高い確率で胎児がその染色体異常症に罹っている」と考える人が医療者にも多いが、これは誤りである。これらの染色体異常症の有病率が例えば1000人に1人程度だとすると、感度・特異度がかなり優れた検査でも結果が陽性の場合に真に疾患がある確率(PPV)は3割程度である。だから診断を確定するためには更なる検査が必要となる。

脳性麻痺の息子と心血管リスクが高い父親

<本日の患者3>
K.M.さん、73歳、男性、町工場手伝い。
N.M.さん、40歳、男性、K.M.さんの一人息子。

 N.M.さんは出生時から脳性麻痺で、運動障害と知的障害があり、けいれん発作を起こしてきた。母親はN.M.さんの出産後まもなく亡くなっており、K.M.さんが男手一つでN.M.さんを育ててきた。

 K.M.さん自身には、高血圧、肥満症、脂質異常症、糖尿病があり、心血管リスクは高い。何とか生活習慣を改善したいと本人も願っているが、N.M.さんの日々のケアで忙殺され、なかなか行動に結びつかないジレンマを感じている。町工場の熟練の機械工として勤め上げとっくに定年を過ぎたが、まだその腕を頼りにされて町工場を手伝っている。

 近未来にAIがもっと発達したら、K.M.さんとN.M.さんのケアのマネジメントを短時間に統合させるアプリによって、2人の食事と運動を記録し、次の目標へ向けた行動科学を利用したメニューを提案してもらえるだろう。ウェアラブル端末によって、K.M.さんの行動変容の進捗状況はクリニックのケアチームにも共有することができ、多職種保健チームのメンバーからのアドバイスもインプットできる。


新着記事

»もっと見る