2026年4月7日(火)

教養としての中東情勢

2026年4月7日

 実行に移せば、軍事施設中心の攻撃から国民の暮らしに直結する社会インフラや石油関連施設への攻撃に拡大。戦争が新たなステージに移行することになる。

 大統領は3月初め、「イランの降伏は間もなくだ」と述べ、その後も「イラン指導部は終戦合意を懇願している」「新しい指導者はこれまでよりはるかに合理的だ」などとイラン側が譲歩するかのように一方的にまくしたてた。バンス副大統領を交渉責任者に指名し、イラン側のガリバフ国会議長との協議に言及、「失敗したらバンスの責任、成功すれば俺の手柄だ」と強弁した。

屈服しないイランを不思議がるトランプ

 トランプ大統領の当初の開戦の目標はイスラム政権の「体制転換」だったが、不可能であることが分かると「ホルムズ海峡の封鎖」に変わった。大統領は4月1日の会見で「あと2、3週間は攻撃を続行する」と表明した。しかし戦闘が長引けば、それだけ政治的なリスクも高まるのは必至だ。

 「イランはそのことがよく分かっている。彼らは米国やイスラエルに勝つ必要はない。生き残り、泥沼化させれば勝利だと思っている」(ベイルート筋)。戦争が長期化すれば、トランプ大統領は秋の中間選挙での敗北を恐れるようになり、世界経済がパニックになれば、それだけ大統領に圧力がかかり、米国が終戦を急がざるを得ない。これがイランの目論むところだ。

 大統領がイラン戦争を仕掛けたのはイスラエルに操られたためとの見方も強いが、「今の事態は何よりも過信が招いた結果だ」(中東専門家)。大統領は昨年6月の「12日間戦争」でイランの核関連施設をたたき、今年1月にはベネズエラのマドゥロ大統領の拉致に成功、政権転覆に成功した。

 「トランプ氏は最強の米軍を使えば、自分の好きなように世界を変えることができると思い込んだ」(中東専門家)。米国のウィトコフ中東担当特使によると、大統領は「イランがなぜ屈服しないか、不思議だ」と漏らしているという。「石器時代にもどしてやる」という最近のイラン非難と合わせ、彼の傲慢さと不遜さを表すエピソードだろう。

 最新の米国の世論調査によると、戦争に対する大統領の支持率は28%にまで落ち込んだ。大統領にとって痛いのは支持基盤であるMAGA(米国を再び偉大に)派の中から批判が相次いでいることだ。

 トランプ氏がイランの石油基地であるカーグ島やホルムズ海峡のケシム島などに地上侵攻することは可能だろう。だが、占領を維持するためには数年もの駐留が必要になる。

 その間、イランからのミサイル、ドローン攻撃に耐えなければならず、兵士の被害も拡大する。大統領は海峡開放に最後通告しているが、これが逆に自らを縛ってしまう恐れがある。最後通告の期限を過ぎて何もしなければ、大統領のTACO(トランプは最後にはビビッて逃げる)という評価は定着してしまう。


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