同社取締役で内航海運事業(船主業)を担当する小倉信好さんは、「それが日本の船の強みだ」と話し、こう続ける。
「日本では二十数年使った船は他の船主へ外売することが多いのですが、外売先のフィリピンやシンガポールなどでは、さらに数十年使います。きちんとメンテナンスすれば、日本の船には長く使い続けられる耐久力があります」(小倉さん)
日本の技術を守るには
メンテナンス力向上も必須
小倉さんは大学で造船技術を学んだが、就職では船舶修繕の道に進んだ。
「新造船の分野は花形で、メンテナンスはどちらかというと裏方、縁の下の力持ちです。ただ、私はこちらを選んで良かったと思っています。ユーザーにとっては〝つくったあと〟の方が大切です。我々の仕事では、使い勝手の良さを追求することに加えて、電気系統の動作点検や部品交換、船内で起こりうる不具合をどう回避するかなど、ユーザーのフィードバックを受けながら改善策を考えることができるので、そこに、この仕事の大きな魅力を感じます」
久野さんも、「日本の技術を守る上でもメンテナンス力こそ重要だ」と強調する。船舶の修繕ではパーツを解体して部品の摩耗や損傷の具合など、中身を確認する工程が発生するが、日本籍の外航船の場合、船主の判断で、中国などでも修繕が行われている。
「日本で最新鋭の技術力を用いて外航船を建造しても、中国をはじめ、海外で修繕されれば中身を見られてしまう。それでは、技術の〝コアな部分〟を開示しているようなものです。本当の意味で経済安全保障を考えるなら、できるだけ国内および日本企業で修繕する体制を整えなければなりません」
向島ドックでは、「モノづくりは人づくりである」という考え方がある一方で、AIも積極的に活用する。一見、矛盾しているようだが、久野さんはその理由をこう話す。
「例えば、お客様からオーダーがあれば、いかに効率よく的確な修繕計画が立てられるかが重要になります。従来は、職人の勘や経験に頼る部分が大きかったのですが、これまでの実績やデータを基に、作業内容や手順、所要時間を整理して作業指示書を作成する際に、AIを活用しています。属人的だった知見をAIによって見える化することで、職人の技能をデータという〝資産〟に転換して活用できるようになりました」


