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Wedge REPORT

2014年7月28日

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勝川俊雄 (かつかわ・としお)

東京海洋大学准教授

1995年東京大学農学部水産学科卒。97年同大学大学院農学生命科学研究科修士課程修了。2002年同大学大学院農学生命科学研究科博士号取得(論文博士)。三重大学生物資源学部准教授等を経て15年4月より現職。

 東シナ海の事例を踏まえた上で、福島の漁業の今後の進むべき方向を考察してみよう。ほとんどの水産資源は、何年か獲らなければ回復するのだが、その間の漁業経営をどう成り立たせるかという問題がある。福島県の漁業が、資源が回復した状態からリスタートできるのは、大きなアドバンテージである。とはいえ、震災前と同じように「自主管理」にゆだねていたら、震災前の水準まで魚が減るのは時間の問題である。本格的に操業が再開する前に、資源が回復した状態を維持して、持続的に漁業ができるような資源管理制度を導入すべきである。

 福島の漁業の復興には、放射能の問題を避けて通ることはできない。県の調査では、水産物の放射性セシウムの濃度が順調に減少していることが確認されているが、今後も放射能検査が必要となる。検査できる量に限りがあるので、漁獲量を増やすという選択肢は無い。漁獲収益を確保するには、漁業者と流通が連携して、魚価(品質)を改善する努力が不可欠なのだ。

 漁業先進国は、「量で勝負する漁業」から、「質で勝負する漁業」に転換して、持続的に利益を伸ばしている。福島県の場合は、禁漁によって資源が回復したが、放射能検査のために漁獲量を制限せざるを得ない。結果的に、「質で勝負する漁業」に転換する条件が整っているのだ。

 今後もしばらく続く試験操業期間を、質で勝負する漁業に移行する準備期間ととらえて、長期的なビジョンに基づき、資源管理とマーケティングの枠組みを構築していけば、福島の漁業が日本のトップランナーとして復活することも可能だろう。

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◆Wedge2014年8月号より









 

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