2026年5月13日(水)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2026年5月13日

 ティサの活動期間は2年に過ぎず、何よりもオルバンに反対して結束した連合である。その議員のほとんどは、政治は初めてである。統治能力がテストされたことはない。

 マジャールは機会を最大限に活かすべく迅速に行動しなければならないことを承知している。彼はエネルギッシュで闘志溢れる構えを既に見せている。

 特に、大統領と国営メディアに対する強い批判がそれである。初期のプライオリティの一つは枢要な機関、特に外務省とインテリジェンス部門からロシアの影響力と繋がりを根絶することだろう。

 オルバンは欧州連合(EU)においてロシアの手先としてのユニークな役割を演じていた。これらの繋がりを白日の下に晒すことはオルバンが復活を試みることを難しくすることにもなる。また、マジャールは欧州あちこちの右派政党に対するハンガリーの支援のインフラを解体するであろう。

 この選挙は三つの教訓を提供する。第一に、権威主義の指導者の共通の弱点は、彼等は権力のシステムは築くとしても、政治的現実に対する感覚を失うことにある。

 第二に、そのような指導者を敗北させるには、上からのエリートの離反に加えて、下からの大衆の動員(特に、若い市民の動員)をすることである。後者だけでは十分でない。

 第三に、選挙に対する外部の影響力は重要であるが、その効能には限界がある。不器用に使うと逆効果ですらある。選挙は国内問題で勝ち負けが決まる、とりわけ、この場合のように経済で決まる。

 マジャールは賢明にも分裂を招く文化的な問題ではなく経済に焦点を当てた。彼はハンガリーの経済的苦境の根底にある根深いシステムをも改革しつつ、生活水準を改善せねばならないことを承知である。恐るべき課題が前途に横たわる。

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平らでない競技場に対抗

 4月12日のハンガリー議会(一院制)の選挙はマジャール率いるティサの地滑り的勝利だった。投票率はほぼ80%に達した。

 ティサによるこの圧勝は誰も予測しなかった。総議席199を分け合ったのは3党だけである。獲得議席はティサ:138(得票率:53.0%)、フィデス:55(38.4%)、我等が祖国(極右政党):6(5.8%)だった。

 これは、マジャールを支援する意味で幾つかの政党が選挙戦から撤退したことと、4党が議席獲得に必要な得票率5%に達しなかったことも影響した結果である。これまでの議会はオルバン率いるフィデスが圧倒的多数の135議席を有し、その他は8党ほどの弱小政党という構成だったから、議会は大きく様変わりした。

 マジャールが政界で頭角を現したのは政権のスキャンダルが契機だった。児童への性的虐待事件の隠蔽を図った人物に大統領が密かに恩赦を与えていたことが発覚して大衆の抗議行動を誘発し、2024年2月に大統領と司法相(マジャールの離婚した元妻)が相次いで辞任することになった。

 これを契機に、マジャールはフィデスを飛び出しそれまで無名の存在だった政党ティサに加わったが、以来、彼はティサを率い、政権の腐敗に焦点を当て、特権階級が私腹を肥やしている実態、経済の停滞、劣悪な公共サービスを告発する活動を展開して来た。

 ハンガリーの選挙制度(小選挙区制と比例代表制の併用)には特徴的なことがある。小選挙区の勝者の次点との票の差が勝者の党の比例代表制の得票に上乗せされることになっている。つまり、全国的に強い政党には追加的なボーナスが与えられることになる。


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