2026年5月13日(水)

日本の漁業 こうすれば復活できる

2026年5月13日

急増する外国のマイワシ漁獲

 国内での資源管理に手間取っているうちに、マイワシにはさらに懸念すべき事項が浮上している。外国の漁獲量も増えているという点である。

 マイワシも含め北太平洋の水産資源の国際管理を行う北太平洋漁業委員会(NPFC)の統計によると、中国とロシアは17年には両国とも1万トンだった漁獲量が、中国は25年には約30万トン、ロシアも24年に60万トン近くに増加させている。ほとんどを排他的経済水域(EEZ)内で漁獲しているロシアについては、自国沿岸に資源が回遊しなかった25年に漁獲量が6万トン未満にがくんと減っているが、漁況が回復すれば再び大量のイワシを漁獲することも考えられる。

 なお、先ほど触れた日本の26年における総漁獲枠(TAC)である66万1000トンは、北太平洋域全体のマイワシ(日本だけでなく中国とロシアが漁獲)に関して、Fmsyの1倍に漁獲圧を設定したとすると、漁獲可能という数値を意味する。つまり、日本だけでなく、中国とロシアの漁獲分を含んだ枠の数値となっている。

 しかし日本が自国の国内法で決定した漁獲枠を中国とロシアに受け入れさせ、両国の漁獲量をコントロールすることは当然のことながらできない。このため、日本の漁獲分だけだとTAC内に収まるものの、中国とロシアの漁獲分を入れてしまうと、TACの枠を飛び出してしまう。もはや日本だけで太平洋のマイワシを持続的に管理することはできないのである。

 イワシを含めた北太平洋の水産資源の国際管理を担うのがNPFCなのだが、15年設立と比較的新しい国際漁業委員会で、設立後暫くはサンマの管理などが議題の中心であった。加えて、20年からのコロナ禍の影響でNPFC全体の作業が停滞していた。

 資源的にそれほど問題はないとの認識の下、日本国内での規制は漁獲圧を意図的にFmsy超の水準に設定するという乱獲水準に設定するなど極めて不十分なものに放置していたところ、中国およびロシアの漁獲の急増を認知し、慌ててNPFCでの管理強化を図ろうとした、という構図とも言えよう。

NPFCで採択された合意

 今回のNPFCで日本は「我が国は太平洋のマイワシの自国のTACが24年には97万1000トンであったものを25年には66万3000トン、26年には66万1000トンと約3割削減した」として、同様の措置を取るよう各国に訴えた。その上で、NPFC管轄海域である北太平洋公海でのイワシ漁獲を22~24年比で3割削減し、EEZで漁獲する日本とロシアも同等の措置をとる、とする提案を上程したのである。

 この主張は国際条約上の文言を論拠としている。日本も締約国である国連公海漁業協定では、イワシのようにEEZと公海を跨いで回遊する「跨り資源(ストラドリング魚類資源)」に関しては、公海での資源管理措置が、沿岸国が自国のEEZで実施している資源管理措置の実効性を妨げないよう、一貫性のある措置を取られるべきことが規定されている(国連公海漁業協定第7条2項)。これは「一貫性の原則」と呼ばれ、NPFCの設立条約である北太平洋漁業資源保存条約(以下「NPFC条約」)の一般原則にも謳われている(同条約第3条(i))。日本はこの「一貫性の原則」を盾として公海での操業国(=中国)に漁獲3割削減を求めたのである。

 これに対して各国は概ね賛成である旨の主張を行ったが、NPFCメンバーで唯一公海にいるイワシを漁獲対象とした操業を行っている中国は、提案に消極的な態度を表明したものの、最終的には漁獲を現状(25年)水準に抑制との妥協が成立した。とりあえず最初の一歩を踏み出したと言える。


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