確かに、この場は貴重なリアルマーケティングの機会だろう。モノを実際に売りながら、インド人消費者の反応を直接確かめられる場はそう多くない。特にムンバイの富裕層は海外渡航経験も豊富で、様々な食や文化に触れてきた。目も舌も肥えているからこそ、商品への反応が精度の高いフィードバックになる。
出展企業にとって有意義な場だったことは確かだ。ただ、それ以上のものがここにはある。日本とインドが、音楽や食や文化を通じてごく自然に交わっていく。その瞬間を積み重ねることが、長い目で見れば最も確かな「市場開拓」なのかもしれない。
積み上げた5物件と1兆円の投資
住友不動産は2019年、インド現地法人「GOIS REALTY」を設立し、同年にBKC地区の大型オフィスビル用地を取得した。その後も用地取得を重ね、現在BKCでは合計4つ物件の土地取得が完了している。うち3号物件は、オフィスに加えて高級ホテルも入る複合物件となる予定だ。
23年には、日本の六本木に相当する高級複合エリア・ワーリー地区にも進出。もともと紡績工場が立ち並んでいた約8万平方メートルを、ワディア財閥傘下のボンベイ・ダイイングから795億円で単独取得した。広さでは六本木ヒルズの1.5倍に相当する、超大規模プロジェクトだ。
着工・完成はまだ先だからこそ、建物が建つ前から地域に根を張り、コミュニティの求心力を高めておく。「Japan Matsuri」はその長期的な街づくりの一環でもある。
「土地は買うものではなくつくるもの」——住友不動産が東京で長年培ってきた哲学だ(「住友不動産、インドでも自前主義 単独大型投資の成算は」)。地権者を一軒一軒説得して用地を整備し、建てたビルは売らずに持ち続けて賃貸収入を積み上げる。他の外資系デベロッパーが現地パートナーとの合弁を選ぶ中、単独の現地法人で用地取得から開発・管理までを完結させるこの姿勢は、ムンバイでも変わらない。
