2026年5月20日(水)

冷泉彰彦の「ニッポンよ、大志を抱け」

2026年5月20日

 NY市場は翌日の現地15日には反落した。これは、米国債の金利がさらに上昇し、債券安となったことを嫌ったものだ。経済的な観点から見て、米中会談が成功という印象が広まったにもかかわらず、翌日には大きく下げたということには、米国の財政悪化、そして何よりも景気後退への危機感があったと考えられる。

 つまり14日の高騰と、15日の反落はセットで考えるべきということだ。基本的には、景気後退への懸念、とりわけインフレ下の雇用低迷という「スタグフレーション」懸念の濃厚なNY市場では、少しでもマイナスの材料があれば株は売られる。これに対するほぼ絶対的な好材料としての「インフレ解消策」プラス「経済浮揚策」というのは、米中通商関係の改善に他ならないからだ。

当面の焦点とAIと半導体

 その一方で、米中会談から週末を経た週明けのNY市場は落ち着いた動きで終始した。これは、当面の景気浮揚、あるいは景気後退の防止というよりも、AIに関する動きを好感したものだ。まず、注目されているのはAIに使用する半導体のメーカーであるNVIDIA(エヌビディア)である。同社のジェンスン・ファン最高経営責任者(CEO)は、今回のトランプ訪中に同行していた。

 当面の焦点は、最先端の半導体の一つであるH200というモデルについてである。当初アメリカは安全保障の懸念から中国への禁輸をしていた。だが、これを緩和しようとすると、今度は中国側が独自開発するので購入はしないと通告、今回は改めて購入を促すセールスの旅という位置づけであった。

 結局、H200の扱いについては明確な発表はなかったが、市場は前向きな感触を材料にしており、NVIDIAの決算発表を直前に買いのトレンドが出てきている。それだけでなく、同じくトランプ氏に同行したイーロン・マスク氏の「スペースX」は、上場審査プロセスが前倒しで動いており、6月上旬に上場という見通しが固まった。

 上場後の時価は、「GAFAM」クラスが新たに誕生する規模だという大型上場である。売出し規模はその一部であるとはいえ、こうした大型上場を成功させるには市場環境が良好である必要がある。そして、「スペースX」は単なるロケット企業ではなく、スターリンクやxAiを含むAI企業でもある。

 週明け月曜日のNY市場は、まさにAI時代の幕開けということを再確認していると言えよう。AIの開発競争においては中国とアメリカの2強が提携する部分は提携し、競う部分は競いながら進む、今回の米中会談はそのような時代のスタートとなった。

 同じく月曜には、グーグルの持株会社アルファベットからスピンオフした、「サンドボックスAQ」というAI開発企業のジャック・ヒダリーCEOがCNBCテレビに出演して米中提携の重要性を説いていた。中国に2年間居住したこともあるヒダリー氏は、医療健康系のAI開発の分野では中国は大きな投資を行っており、この分野では特に米国は中国とは手を組む必要があるというのである。


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