IAEAに協力的だったイラン
米・イスラエル両国は昨年、イスラエルが6月13~24日にかけて、イラン国内の複数の核関連施設に対する軍事作戦を展開、続いて同22日には、米軍が3カ所の施設を対象とした空爆に乗り出した。
今回の報告書によると当時、IAEAは、イラン側の了解の下に、同国内で安全管理のための現地査察を実施中だったが、米・イスラエル両軍による予告なしの軍事行動によって、査察官の身の安全が確保できなくなったとして、同月末までに、各核施設で活動中だった査察官全員を撤収させた。
同時に、ラファエル・グロッシ事務局長は理事会宛に緊急声明を提出、その中で「平和利用を目的とした核施設に対する武力攻撃は、人員、環境に損害をあたえるばかりか、核施設の安全管理、地域および国際平和、安全保障に深刻な影響を与えるものであり、いかなる形であれ許しがたい」と語気を強めて非難した。
また、同事務局長は、イスラエルが攻撃開始した同月13日、ただちに国連安保理に対し、「すべての当事者が行動を抑制し、事態のエスカレーション回避に努めるべきだ」と提訴していたが、米側はこれを無視し、9日後には、空爆作戦を強行している。
一方、イラン側は当然これに反発、同年7月2日、ベゼシュキアン大統領がIAEAとの協力協定についても、当分凍結する特別法を成立させた。ただ同時に、「NPT条約に沿った安全管理を徹底させるためのIAEAとの通常の協力関係再構築の重要性」には理解の余地を残していた。
いずれにしても、少なくとも対イラン攻撃前までは、イラン側の核施設安全管理に対する取り組みは、IAEA側の説明を読む限り、前向きであり、協力的だったことがうかがえる。
トランプ大統領が今回の対イラン攻撃に踏み切った際の口実として述べた「欧州同盟諸国を今にも脅し、まもなく米国本土にも届く切迫した重大な核の脅威」への言及は当時、説得性を欠くものだった。
この点に関しては、最新の米世論調査で、対イラン作戦の支持率が30%台前半に低迷している背景として、米国民の3人に2人が「攻撃開始の理由についてのトランプ大統領の説明に納得できない」と答えていることは興味深い。
