米国・イスラエルによる対イラン攻撃再開の可能性
5月25日付「タスニーム通信」で、モハンマド・アリー・ジャアファリー元革命防衛隊司令官は、米国との協議に当たって、まずは米国側からの信頼情勢措置が講じられるべきであって、そうでないならば再協議には応じられないとの立場を表明した。この発言がイラン現体制の考え方を表しているのだとすれば、イラン在外凍結資産の一部解除など、米国が先にイランに対する経済的利益を与える決断ができれば、最初の関門が突破される可能性はある。
イラン側とて、戦争で引き起こされた全ての損害の賠償がなされるとは考えておらず、あくまでも交渉に際して「高めの球を投げた」だけだとみられるため、この点に関しては折れることができるだろう。そうすれば、イスラエルの動向次第という側面が強いものの、ホルムズ海峡問題と核問題の2点以外の問題をクリアすることはできるかもしれない。
その一方で、本稿で見てきた通り、特に核問題に関しては米国・イランの譲歩の余地が極めて小さい。イランは平和目的のための核開発は、核不拡散条約によって認められた正当な権利だと考えており、また核開発を行うことで抑止力を高めることもできる。米国にとっても、JCPOA以上の内容の合意を結ぶハードルは非常に高い。
そうだとするならば、米国・イスラエルによる対イラン攻撃の再開という悲観的なシナリオは存在し続けると言わざるを得ない。場合によっては、米国が硬軟両戦術を採用し、イラン国内での軍事作戦と、イスラマバードでの交渉を同時並行で進める事態も想定されよう。
イランからの「差し迫った脅威」があるとして始まった今回の戦争だが、米国の成し遂げたい戦略的目標が曖昧な中で着地点の見えない状況が続いている。米国、イラン、イスラエルの思惑が異なっている状況において、今後の先行きは依然不透明である。

