公海での枠削減を巡る国際攻防
日本はマサバもゴマサバも、そのほとんどを自国EEZで漁獲する。他方、公海で漁獲しているのは現在ほぼ中国のみで、これに加えて欧州連合(EU)がサバ漁業への参加を伺っている。
日本としては公海での「沖取り」は抑制したい。北太平洋公海域を管轄するNPFCではサバに関して規制強化を訴える側である。
NPFCは下部機関として科学委員会を有しており、今回のNPFC本会議に同委員会はサバに関する資源評価報告書を提出した。現在の漁獲圧が持続的な水準ではないと結論づけた一方、どの位削減すべきかについては特定の勧告は行わず、様々な試算値を具体例として挙げる内容となっている。
筆者も政府とは独立のオブザーバーとして参加した今年4月のNPFC本会合において、日本は上記の科学委員会からの種々の試算値をベースに、26年の公海でのマサバ漁獲枠を21~23年平均の漁獲実績約9万トンから75%減、25年の漁獲実績約4万4000トンから半減の2万2500トンとするとの提案を行った(NPFC (2026), “Proposed revision to CMM 2025-07 for Chub Mackerel,”参照。25年実績についてはNPFC (2026) “NPFC 2025 Fisheries Overview,” p. 4参照)。
科学委員会報告書では、過去上位3割に入るほどの資源量水準に10年で回復させようとするなら、漁獲がない場合と比べ親魚量を半分強(55%)残すような漁獲をする必要があり(専門用語では「F55%SPR」と言い、先ほどの「親魚量を半分強残す」という表現は一般向けのもので、説明としてはやや正確性に欠けることをご容赦いただきたい)、漁獲圧を現状から7~8割下げるべき、と解釈できる試算があった。これをもとに、前年比75%減の2万2500トンの枠を提案したのである。
日本側は「この提案は科学委員会の試算をベースにしている。我が国はこれまでもサバ資源保護のため多大な努力を払ってきた。しかるに、外国が漁獲を開始してから資源が大幅に減ってしまった。資源の減少を受け、我が国は自国内の漁獲枠を近年7割もカットするなど、厳格な管理を導入している。ついては、公海でもこれと一貫した同等の措置を取って欲しい」と訴えた。日本の削減案には韓国も共同提案国として名を連ねた。
これに対して中国は大規模な削減提案に難色を示し、将来サバ漁業への参入を窺うEUも日本案へ疑問を提示した。
中国の反対の理由の一つは「このように大規模な削減は自国の水産業界にとって受け入れ難い」という身も蓋もない経済的利害むき出しの理由によるものだが(NPFC (2026) “10th Commission Meeting Report,” pp. 35-36)、もう一つの理由は「公海操業国だけに負担を押し付けるのはアンフェアだ」という旨の理屈に基づいている。中国は「この提案での漁獲制限措置は公海だけに関するものではないか」と主張するとともに「NPFCでは公海の漁獲枠を24年から設定しているが、漁獲実績はその7割程度に過ぎない。公海側での漁獲圧は既に低減されている」と訴えた。
EUは、日本が「わが国の多大な努力によって資源は回復した」との主張に対し「それは疑問だ。13年にたまたま仔魚の生き残りが良く、そのせいで資源が増加したということを我々は知っている」と発言した。

